NMR 計算のアドバイス

Share This:

手軽に計算できる環境が誰でも手に入る時代になった今、理論化学者だけでなく実験科学者も積極的に計算を活用しています。その最たる例が NMR、UV、CD などをはじめとしたスペクトル計算です。
しかし、NMR 計算の結果と実験値がぴったり一致することは極めて稀です。

計算レベルの影響

NMR 計算の結果と実験値を比較すると各シグナルのケミカルシフト値の大きさの順序などはもちろん一致するのですが、絶対値は少しずれます。これらは、汎関数の種類、基底関数のレベルによって大きく変化します。
時折、学会で NMR 計算の値と実験値を比較したという発表を聞きますが、どの程度計算レベルを検討したのかが、気になります。

例として、計算のプロが出した論文を見てみましょう!

Nobilisitine の構造訂正

J. Nat. Prod. 2011, 74, 1339–1343.
Michael W. Lodewyk and Dean J. Tantillo
DOI: 10.1021/np2000446

この論文は、過去に単離された天然物の立体化学が間違っていたので、NMR 計算によって構造訂正をしたというものになります。

手順としては、
⑴ 実際のNMRの測定結果のある類縁体に対し、複数の計算レベルで NMR 計算を行い、もっとも誤差の小さい計算レベルを決定します。この論文では、最適な計算レベルであっても平均0.3 ppmほどシフト値と実測値がズレています。しかし、各シフト値の順番は入れ替わらないため、全体的に少しシフトしているという感じです。
⑵ 次に、類縁体での計算結果をもとに、新規化合物の構造訂正を行います。コンフォメーションによってもシフト値が変わってしまうため、考えられ得るすべてのコンフォマーを計算します。

つまり、もし自分の扱っている化合物の NMR スペクトルを計算しようと思うのなら、すでに構造決定されている類縁化合物を使って最適計算レベルを決定する必要があります。

CHESHIRE

しかし、計算レベル決定は非常に煩雑な作業です。
そんな人は、UC Davis の Dean Tantillo 教授らが作成した website “CHEmical SHIft REpository” (略称 CHESHIRE) を参考にするのが良いです。どのような計算レベルの時に、どの程度誤差が生じるのかが出ています!

【追記】
元記事への大量アクセスが検出されましたので削除し、記事を作り直しました。
元記事投稿日 2016年10月17日 @ 08:50

関連する記事

コメントを残す(投稿者名のみ必須)