B3LYP とは?

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B3LYP は最初の混成(ハイブリッド)汎関数であり、量子化学計算の歴史において最も使われてきた汎関数です。
論文引用数は 2014 年時点で 46,000 回以上で、最も引用された論文ランキングでも 8 位に入っています。(引用元: Nature  news

内容

B3LYP にはハートリーフォック交換積分の混合率だけではなく、B88 交換汎関数、LYP 相関汎関数、そしてLDA 交換・相関汎関数からの差のそれぞれの混合率の計 3 個のパラメータを含みます。B3LYP の”3″は 3 個の汎関数を含んでいることに由来します。

    \[E^{B3LYP}_{XC} = E^{LDA}_{XC} + a_1 (E^{HF}_X - E^{LDA}_X) + a_2 {\Delta}E^{B88}_X + a_3 (E^{LYP}_C - E^{VWN-LDA}_C ) \]

(注) 文献 1 では、以下のように記述されている。

    \[E_{XC} = E^{LSDA}_{XC} + a_0 (E^{exact}_X - E^{LSDA}_X) + a_X {\Delta}E^{B88}_X + a_C {\Delta}E^{PW91}_C\]

混合の比率は G2 ベンチマークセット (文献 2) の物性値を満たすようにフィッティングされています。すなわち、比率に物理的な意味はあまりなく、実験値と相関するようにしてあります。上記の式では、a_1 = 0.20a_2 = 0.72a_3 = 0.81 となっています(文献 1 では、a_0 = 0.20a_X = 0.72a_C = 0.81)。

上式中で、E^{LDA}_{XC} を用いているのに、交換積分を一部 HF で置き換えています(a_1 (E^{HF}_X - E^{LDA}_X) の部分)。これは、化学結合を強く見積もりすぎる原因である LDA 交換汎関数の不十分さを一部 HF 交換積分で置き換えることによって回復させるのが目的とされています。

また、B3LYP をより実験値と合うように改良した汎関数に mPW1PW91 があります。

参考【Enthalpy】B3LYP での計算誤差について【Underestimation】

問題点

小分子の化学物性計算において驚くほど高い精度の結果を与える(鵜呑みにしないように!)一方で、化学反応計算や大規模分子の化学物性計算において、様々な問題点が指摘されているので注意が必要である。B3LYP をとりあえずの第一選択として用いるのは良いが、自分の計算する系に近い先行研究例や B3LYP のベンチマークなどを注意深く眺めて、最適な汎関数を選ぶことをお勧めする!

引用方法

[1] A.D. Becke, J.Chem.Phys. 1993, 98, 5648-5652.
[2] C. Lee, W. Yang, R.G. Parr, Phys. Rev. B 1988, 37, 785-789.
[3] S.H. Vosko, L. Wilk, M. Nusair, Can. J. Phys. 1980, 58, 1200-1211.
[4] P.J. Stephens, F.J. Devlin, C.F. Chabalowski, M.J. Frisch, J.Phys.Chem. 1994, 98 11623-11627.
[1] は B3、[2] は LYP, [3] は VWN, [4] は assembly に関しての論文。

参考文献

  1. A.D.Becke J. Chem. Phys. 1993, 98, 5648-5652. DOI: 10.1063/1.464913
  2. L.A.Curtiss, K.Raghavachari, G.W. Trucks and J.A.Pople J. Chem. Phys. 1991 94, 7221-7230. DOI: 10.1063/1.460205

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