B88 交換汎関数

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B88 交換汎関数は、1988 年に Axel D. Becke により開発された汎関数であり、量子化学計算で最も利用されている GGA 交換汎関数である(参考文献 1)。
(注)GGA = Generalized Gradient Approximation : 一般化勾配近似

内容

B88 交換汎関数は最初期に開発され、かつ、最もよく用いられている GGA 交換汎関数である。B88 は 局所密度勾配近似 (LDA: Local Density Approximation) の補正するものとして発表された。

B88 以前

LDA は原子・分子の交換エネルギーを約 10 %  過小評価してしまうことが知られていた。そのため、多くの補正方法が開発されました。例えば、LGC (Lowest-order gradient correction) は以下の式で表されます。

    \[E^{LGC}_x=E^{LDA}_x-{\beta}\sum_{\sigma}\int\frac{|\nabla\rho|}{\rho^{4/3}}d^3r\]

この方法は X\alpha\beta 法と呼ばれました。
しかし、この方法にも問題があり、実用的にはその場しのぎの修正を逐一行わなくてはいけないこと、定数 \beta を含んでいることが問題でした。
LGC を改良したものを Becke は 1986 年に発表しました(参考文献 2)。

    \[E^{SE}_x=E^{LDA}_x-{\beta}\sum_{\sigma}\int{\rho^{4/3}_{\sigma}}\frac{x^2_{\sigma}}{(1+{\gamma}x^2_{\sigma})}d^3r\]

SE は semiempirical の意味、x_{\sigma}

    \[x_{\sigma}=\frac{|\nabla\rho_{\sigma}|}{\rho^{4/3}_{\sigma}}\]

で表される無次元の比です。\beta\gammaはパラメータです。この方法は X\alpha\beta\gamma 法と呼ばれました。

B88 の開発

B88 の開発では上記二つの汎関数を改良するため、以下の点が考慮されました。

  1. 次元の一致
  2. LGC 汎関数は密度勾配の小さいところで得られた
  3. 密度勾配の大きなところでも良い結果を与えること

    \[\epsilon^{B88}_X=\epsilon^{LDA}_X+{\Delta}\epsilon^{B88}_X\]

    \[{\Delta}\epsilon^{B88}_X=-{\beta}\rho^{1/3}\frac{x^2}{1+6{\beta}xsinh^{-1}x}\]

    \[x=\frac{|\nabla\rho|}{\rho^{4/3}}\]

B88 の原子・分子の交換エネルギーの再現性は、それ以前に開発されていたあらゆる交換汎関数よりも劇的に高かい(LDA に比べて 2 ケタも精度が良い)。そのため、B88 の登場以降 DFT が量子化学計算において爆発的に普及する原因の一つとなった。

参考文献

  1. “Density-functional exchange-energy approximation with correct asymptotic behavior” A. D. Becke 1988 Phys. Rev. A 38, 3098-3100. DOI: 10.1103/PhysRevA.38.3098
  2. “Density functional calculations of molecular bond energies” A.D. Becke, J. Chem. Phys. 1986 84, 4524. DOI: 10.1063/1.450025
  3. Introduction to Computational Chemistry 2007, Jensen F.

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