いやいや、密度汎関数理論は正確な関数を目指す道から外れてはいない!

Share This:

前回の記事では、今年の初めに Science 誌に掲載されたジョン・パデュー John Perdew らの論文 “Density functional theory is straying from the path toward the exact functional” を紹介しました。しかし、今月の初めにそれに反論する論文が発表されていました(Twitter のフォロワーの方に教えていただきました)。
今回の記事では、その反論についてご紹介します。反論というよりも、むしろレフェリーコメントのような印象を受けました。

“Density Functional Theory is Not Straying from the Path toward the Exact Functional”
Kasper P. Kepp (Submitted on 2 Feb 2017)
arXiv.org (PDF のダウンロード可)

前回の論文は、何が問題だったのか?

前回の論文では、Be^0, B^{3+}, B^+, C^{4+}, C^{2+}, N^{5+}, N^{3+}, O^{6+}, O^{4+}, F^{7+}, F^{5+}, Ne^{8+}, Ne^{6+}, Ne^0 に対しての計算結果をもとにベンチマークを作成していました。しかし、この計算結果は、非常にコンパクトで多価の 2, 4, 10 電子系、つまり 1s^2, 1s^22s^2, 1s^22s^22p^6 に対してのみの計算でした。また、最近開発された汎関数としてフルボッコにされていたのは、ドナルド・トゥルーラーDonald G. Truhlar らが開発した Minnesota 汎関数であり、それ以外の最近開発された汎関数は、良い結果を示していました(SCAN(2015)やAPFD(2012)などなど)。つまり、Science の論文は少しミスリーディングな部分も含んでいるということです。

それよりも重要なのは

エネルギーは正確だが電子密度の精度は悪いということを調べるのではなく、二つの関係性をより詳しく精査する方が重要だと著者は述べています。つまり、それぞれの汎関数において、なぜエネルギーが正確であるのに電子密度の誤差が大きくなってしまうかの原因を特定する方が、今後正確な汎関数を行っていく上で重要だということです。正論ですね。
パラメータをたくさん使うことと電子密度の正確性の関係も疑問です。

別の計測の仕方では?

今回紹介する論文では、Science の論文とは異なる解析法でグラフを作成していますが、この解析方法では M06-2X は良い結果を示しています。Science の論文でハイブリッド汎関数が良い結果を示したのは、ベンチマークの系に合っていたからだろうとも述べられています。

これ以上詳しいことは、ぜひ論文を読んでみてください。

ちなみに管理人の印象では、M06-2X は系によって左右される感じがしています。ある系では、素晴らしい結果を与えるのに対して、別の系ではイマイチなこともあります。でも、これは管理人が行ったごくごく少ない経験からの印象であり、また、管理人は専門家ではないので、よくわかりません。

関連する記事

コメントを残す(投稿者名のみ必須)