米 Cray 社 2017年の大きな損失を報告、2018年にそれを回収する見通し _Top500 News No.1_

TOP500 の NEWS 欄には、毎週スーパーコンピューターに関する最新情報が報告されています。残念ながら、日本のメディアではほとんど報道されません。
本ウェブサイトでは、それらのニュースを定期的に日本語で紹介していきます。

今回紹介する記事は、
“Cray Reports Big Losses for 2017, Looks to Turn It Around In 2018”
February 16, 2018

概要

Crayは 2017 年の財務報告で 1 億 3,380 万ドルの純損失を報告しました。これは、ここ数年で最悪の数字です。同社が 2009 年に初めて赤字を記録して以来の過去2番目に最悪の純損失となりました。

収入の減少これに拍手をかけていました。 2016 年には 6 億 2,660 万ドルあった収入が 3 億 9250 万ドルにまで減少しました。Cray の収入がここまで低かったのは、2012 年の 4 億 2,110 万ドルが最後です。

このように財務報告が悪くなってしまった一因は、当社が米国のすべての繰延税金資産 (deferred tax asset) に対して適用することを決定した評価引当金に起因する可能性があります。 2017 年の “Tax Cuts and Jobs Act” と呼ばれる新たな米国の税法では、企業は外国の利益を 1 回限りの低い法人税率で本国に送還することができました。 Crayは、他の企業と同様、この条項を 2017 年の財務に利用しています。 クレイの場合、その影響は 1 億 800 万ドルでした。

しかし、これは損失の大きさのみを説明しています。 2017年の Cray の大きな問題は、スーパーコンピュータ市場の低迷でした。 Cray の CEO である Peter Ungaro 氏は、2017 年の財務業績を報告した投資家からの電話で、ハイパフォーマンスコンピューティング分野での「大幅な悪化」を説明しています。 景気後退は、すべての市場と地域に及んだと同氏は述べています。

同氏は、不況の原因として 5 つの要因を挙げました。1.  世界的な政府の資金調達環境が困難であること、2. プロセッサの技術改良のペースが遅くなっていること、3. メモリコストが高騰していること、4. エネルギー市場が縮小していること、そして 5. 大規模な顧客が古いシステムの置き換えに積極的でないこと。 5 つ目の要因に関して同氏は、現場の多くのスーパーコンピュータが、従来言われていた 4 年間の寿命を超えて現在でも良好に動作していると指摘しました。

2015 年のピーク時と比較すると、2017 年に市場は 60 %減少したと考えられまっせ」とUngaro氏は述べています。それは同社に 7 億 2,470 万ドルの収入をもたらした年でした。

Crayにとっての明るい話題のひとつは、商業 HPC の分野で成長が見られることです。これは、ドルベースと収入のパーセンテージの両方で増加しました。 Ungaro氏は、「Crayは 2016 年の一桁から、2017 年には売上高の 12 %以上を商業顧客から得とる」と述べました。

Cray が比較的楽観的にこの状況を見ているひとつの要因に、気候/気候モデリング分野を Cray が独占し続けているということが挙げられます。 この分野の最新の成果はインドに設置された 2 つのマルチペタフロップ XC40 スーパーコンピュータによって得られたものです。それらは、インドの Pune にある熱帯気象学研究所(IITM)、Noida にある国立の中規模天気予報センター(NCMRWF) に設置されています。Pune にあるスーパーコンピューターは、Pratyush という名前の 4 ペタフロップスのスーパーコンピュータで、現在はインドで最も強力なシステムです。

もう一つの期待できる分野は AI 市場です。 Cray の最初の大きな勝利は、昨年 11 月にサムスンが自動運転車に関連するシステムを含む AI や Deep Learning の研究に使用される CS-Storm GPU クラスタを購入すると発表したときでした。 無名の金融サービス会社も、Deep Learning のために GPU で加速された CS-Storm を選択しました。この CS-Storm によって、会社の損害賠償と財産保険請求がより良くなるでしょう。

データ分析分野では、Cray が主に Urika-GX システムでその存在を拡大しようとしています。 2017年には政府機関にこれらをペアで販売していました。政府機関には分析のためのプラットフォームが必要だったようです。

将来の成長に向けては、AI と分析技術の両方が Crayにとって重要なテーマです。Crayは、これら二つが HPC よりも急激に成長している市場に参入していく手段と考えています。 スーパーコンピュータメーカーの高性能ストレージへの拡大(主に ClusterStor 買収のおかげで)も同様です。

今年は上向きの予想だそうです。 同社は、大きなシステムの調達について、早期に回復の兆しを見せています。 要因としては、米国や他の国の政府予算が堅調に推移しているように見えることが挙げられます。 Cray は 2017 年の 3 倍の入札を期待しています。そして、Cray の勝率は歴史的にかなり良いので、今年はもっと多くの収入がパイプラインに入ることを示唆しています。 もちろん、そのうちの今年はその一部のみで、そのほとんどは2019年以降に入ってくる予定です。

2018 年は、2017 年に比べて収益が 10〜15 %増加すると予測しています。2016 年の収益水準に戻ったり、2015 年の記録年には戻るとは予想していません。

2018年には製​​品ライン全体が刷新されるため、引き続きバリュープロポジションを拡大していきまんねん」とUngaro氏は述べています。 「来るべき四半期でこれ以上のことを見守ってください!

将来を見据えて、Cray は今後数十年わたり勢いを加速させるために世界的な押し上げを期待しています。 唯一のスーパーコンピューター専門会社であることから(?)、エクサスケールのゴールドラッシュに対してかなり良い立場にあります。 次の 5 年間には、複数のエクサスケールマシンが導入されているはずです。 これらのシステムのそれぞれは数億ドルの価値があるため、比較的少数の売り上げでさえも Cray の収益に大きな違いが生じます。

今後数年間でスーパーコンピューティング市場が勢いを増してくると見えとる」とUngaro氏は結論づけています。 また、「2020 年代初頭から 2020 年代中期までは、エクサスケールの達成とるっちゅうスーパーコンピューティングの歴史の中でもベストなものになる」と述べています。

感想

Cray は、アメリカワシントン州シアトルのスーパーコンピュータ製造企業です。最新の TOP500 のトップ 10 でも 3位 Piz Daint, 5位 Titan【アメリカ, 7位 Trinity, 8 位 Cori は Cray 社製です。しかし、その大手企業の Cray 社でも 2017 年は赤字になってしまったそうです。

参考【TOP500】スパコンランキングの見方!【Graph500_Green500】

でも、最近 AI に関する関心が高まっていますので、GPU または TPU をたくさん搭載したスーパーコンピューター、またはエクサスケールの達成を目標としたスーパーコンピューターの製造が期待されていますので、今後の見通しは明るさそうです。

日本では Pezy computing がスーパーコンピュータ製造企業として期待されていましたが、助成金の不正使用で騒がれています。もし、この事件によってこの分野への国からの投資が少なくなってしまうと、日本は様々な分野で大きく取り残されていくと思います。

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