遷移状態のCBS-QB3計算ができません
光化学反応を研究している大学院生です.Gaussian16で遷移状態の高精度エネルギー計算を行おうと思っているのですが,うまくいきません.
DFT b3LYP 6-31++G(d,p)を用い,QST2法で反応物と生成物から遷移状態の構造を計算しました.その構造を用いて,CBS-QB3法でエネルギー計算を行いました.すると,遷移状態の構造が構造最適化されてしまい,生成物の構造が出力されました.また,エネルギーも生成物のものが出力されてしまいました.もちろんキーワードとしてoptを入れているわけではありません.
構造最適化を済ませたchkファイルを読み込ませれば良いとの情報を得て試したのですが,同様の結果になりました.
遷移状態構造のCBS-QB3法によるエネルギー一点計算はどのように行うのでしょうか?ある論文では,遷移状態のエネルギーもCBS-QB3法によって求めており,原理的には不可能ではないと思っています.
また,そもそもエネルギー計算しかできない計算方法なのに,なぜインプットした構造が変わるのか疑問に思いました.
お忙しいところ恐れ入りますが,ご存知でしたらご教示お願い致します.
最後になりましたが,このようなサイトを作っていただき,大変感謝しております.いつも参考にさせていただいています.
Gaussianから返信を頂きました.返信を要約と翻訳して投稿いたします.一部理解が追いついていない部分もありますので,日本語訳が変になっているかもしれません.
Gaussianからの返信————————————————
CBS-QB3などのcompound法は,安定化合物の熱化学的データを再現するためにパラメーターを設定してあるので,遷移状態のエネルギーを計算するには,相関補正と経験的補正を遷移状態に正確に適用できるという前提が必要です.CBS-QB3法は,遷移状態に拡張可能ないくつかの経験的修正を使用していますが,これは実測値に基づいたテストを経ていません(遷移状態のテストをすること自体が難しい).
compound法では,すべての計算は構造最適化から始まるように設計されており,デフォルトでは安定構造に収束されます.遷移状態の構造では,虚振動を最小に抑えるように計算される可能性があります.
Gaussian16では,SPとNoOptというキーワードが使えます.CBS-QB3(SP)では,入力構造をB3LYP計算(構造最適化とは書いてありませんでしたが,そうだと思われます)してから,相関計算を実行します.CBS-QB3(NoOpt)では,入力構造のB3LYP振動数計算を行い,その後に一点相関計算を行います.構造が最適化されているとは想定されていないため,Freq=Projectedを実行して勾配に沿った項を削除します.すでに最適化されたTS構造でこの計算を実行しており,勾配がゼロである場合は実行されません.
したがって,CBS-QB3でTS構造を計算する手順は,B3LYP/CBSB7レベルでTS構造を最適化し,チェックポイントファイルを以下のように読み込みます.チェックポイントファイルから構造を読み込み,構造最適化後の計算を実行します.
%chk=TS.chk
# CBS-QB3(NoOpt) Geom=AllCheck Guess=Read
——————————————————————-
とのことで,TS構造のチェックポイントファイルを読み込み,上のキーワードで計算を試しているところなのですが,l913.exe(post-SCF(電子相関)エネルギーとその微分計算)のエラーが出て,先に進めない状態です.
遷移状態ではない構造の場合は,上のキーワードを入れてもエラーが出ずにちゃんと計算できます.
何度もお返事を頂きまして,ありがとうございます.非常に勉強になりました.
解決しましたら,また投稿させて頂きます.