アクセル・ベッケ Axel D. Becke

Axel Dieter Becke (1953 年 6 月 10 日 -) 理論化学者。カナダのダルハウジー  Dalhousie 大学教授。
(トップ画像は youtube より転載)

Becke は、密度汎関数法 (DFT) の分野において多大な貢献をした科学者である。とりわけ彼の発表した B3LYP は、計算化学の分野で最もよく使われている汎関数であり、論文被引用回数は 2014 年時点で 46,000 回以上で 歴代第 8 位である(引用元: Nature  news)。

生い立ち

Becke は、ドイツのエスリンゲン Esslingen にて生まれた。1975 年に カナダのクイーンズ大学 (Queen’s University) で学士号を取得した。そした、カナダのマックマスター (McMaster) 大学にて 1977 年に修士号、1981 年に博士号を取得した。1981 年から1983 年までカナダの Dalhousie 大学にて博士研究員として働き、その後、クイーンズ大学にて教員となった。現在は、Dalhousie 大学の教授である。

研究内容

Hohenberg-Kohn の定理および Kohn-Sham(KS)法の発表以降、理論的に体系化された密度汎関数法(DFT) は、固体物理の分野ではすぐに取り入れられたが、量子化学の分野ではなかなか受け入れられなかった。その当時は分子軌道法に比べ精度が大きく劣っていたということが理由として挙げられる。しかし、1988 年に Becke により B88 交換汎関数(文献 1)が、Lee、Yang、Parr らにより LYP 相関汎関数が開発され、これら一般化勾配補正近似 (GGA) と呼ばれる理論の登場により DFT の精度は大きく向上した。さらに、1993 年に Becke は最初の混成(ハイブリッド)汎関数である B3LYP を開発し(文献 2)、DFT の計算精度は大きく向上し、現在のように様々な分野で使われるようになった。

また、電子対の局在を可視化する方法である電子局在関数 (Electron localization function: ELF) の考案者でもある(文献 3)。

本人登場の動画。

参考文献

  1. “Density-functional exchange-energy approximation with correct asymptotic behavior” A.D. Becke, Phys. Rev. A 1988, 38, 3098. DOI:10.1103/PhysRevA.38.3098
  2. A.D.Becke J. Chem. Phys. 1993, 98, 5648-5652. DOI: 10.1063/1.464913
  3. “A simple measure of electron localization in atomic and molecular systems” A.D.Becke, K.E. Edgecombe, J. Chem. Phys. 1990, 92, 5397–5403. DOI: 10.1063/1.458517

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