2020年01月前半 kwh_rd100の注目論文BEST3

 計算化学.comスタッフの kwh_rd100 です。今年もよろしくお願い申し上げます。各種の計算ソフト群をツールと割り切って使う立場から、2020 年 01 月前半の注目論文 BEST3 を紹介させて頂きます。

  1. Machine learning enabled autonomous microstructural characterization in 3D samples
    (機械学習により、3Dサンプルで自律的な微細構造の特性評価が可能に)
    https://www.nature.com/articles/s41524-019-0267-z
  2. Retrosynthesis Prediction with Conditional Graph Logic Network
    (条件付きグラフ論理ネットワークによる逆合成予測)
    https://arxiv.org/abs/2001.01408
  3. Strain Visualization for Strained Macrocycles
    (ひずみのあるマクロサイクルのひずみの可視化)
    https://doi.org/10.26434/chemrxiv.11555814.v1

202001-前半 注目論文①

1.Machine learning enabled autonomous microstructural characterization in 3D samples
 (機械学習により、3Dサンプルで自律的な微細構造の特性評価が可能に)
 https://www.nature.com/articles/s41524-019-0267-z

[エグゼクティブサマリー]

 多結晶固体からポリマー複雑な流体などの柔らかい材料に至るまで、いくつかの異なるクラスの材料について、物理的、機械的、光学的、化学的、熱的特性に大きな影響を与える粒度分布、ボイド、多孔性および微細構造の特徴付けに、トポロジー分類、画像処理、クラスタリングアルゴリズムを含む教師なし機械学習を組み合わせて、3Dサンプルの迅速な微細構造特性評価を可能にした。

[kwh_rd100のコメント]

 教師なし ML アプローチの概要は以下の通り。まず、ローカル構造トポロジカル分類子、ボクセル化、および画像処理を使用したデータの事前調整を行う。次いで、教師なしMLクラスタリングアルゴリズムを使用して、微細構造の統計と分布を取得する。最後に、ラベル拡散などの手法を使用してスコア改良をして、バックマッピングにより原子表現を回復している。 ベンチマークとして、ナノ結晶金属、ポリマー、複雑な流体、および実験的に公開された特性データを表すさまざまな合成データサンプルを提示。このアプローチは堅牢性、計算効率ならびにエラー感度に優れることから、リアルタイム分析への適合性も高いと解される。

202001-前半 注目論文②

2. Retrosynthesis Prediction with Conditional Graph Logic Network
 (条件付きグラフ論理ネットワークによる逆合成予測)
 https://arxiv.org/abs/2001.01408

[エグゼクティブサマリー]

 反応テンプレートに関する化学知識を論理規則とし、これらの規則のノイズを許容した条件付きグラフィカルモデルによる逆合成予測の提案。このモデルでは、変数は分子であるものの、推定される合成関係は分子のグループ間で定義され、潜在的に無限の数の可能な分子エンティティを処理するため、このモデルに埋め込まれたニューラルグラフを活用する。予測の解釈も提供可能。既存手法より8.1%の精度改善あり。

[kwh_rd100のコメント]

 条件付きグラフ論理ネットワークは、反応の化学的な実現可否を暗黙的に考慮して、反応テンプレートのルールをいつ適用するかを戦略的に学習し、効率的な階層サンプリングにより、計算コスト軽減に成功している。しかしながら、単一の製品を合成する多くの合理的な方法が潜在的に存在するため、シングルステップではない逆合成への適用可能性は不明である。新しいテンプレートの導入により、本手法の容量と堅牢性を高めることは原理的には可能なものの、NP 完全問題の一つであるサブグラフ同型問題を抱えていることに変わりはなく、スケーラビリティ懸念は以前として残る。

202001-前半 注目論文③

3. Strain Visualization for Strained Macrocycles
 (ひずみのあるマクロサイクルのひずみの可視化)
 https://doi.org/10.26434/chemrxiv.11555814.v1

[エグゼクティブサマリー]

 大環状化合物の歪みを決定するための新しい計算方法の提案。分子の一部を対称的に削除してフラグメント化(両端は水素原子キャップ)し、当該フラグメントの座標を緩和してエネルギー最小化をすることにより、局所的な歪み分子全体の歪みを計算し、これを可視化する。本手法は、湾曲した芳香族分子のみならず、歪んだ分子に広く適用可能。実装あり(https://github.com/CurtisColwell/StrainViz)。

[kwh_rd100のコメント]

 歪み解析では、歪み分子の総歪みエネルギーのみならず、構造変化が分子内のひずみにどのように影響するかについて、分子の歪みのある断片 (=分子の一部を対称的に削除して作成したフラグメント) の最適化により、結合にマッピングされた歪みエネルギーの図を得て、歪み分子の局所特性と反応性についての考察を可能にしている。実装コードでは、ひずみエネルギーが負の値になったり、構造最適化の途中で明らかなエネルギー増加となった場合には、計算失敗フラグが表示されるなどのトラブルシューティングが用意されている。なお、従前の文献値 (計算結果あるいは反応データ) との一致度が高いことから、本手法の計算精度は十分とされている。

さいごに

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