2020年10月前半 kwh_rd100の注目論文BEST3

 計算化学.comスタッフの kwh_rd100 です。各種の計算ソフト群をツールと割り切って使う立場から、2020年 10月前半の注目論文 BEST3 を紹介させて頂きます。

1)A Chemically Consistent Graph Architecture for Massive Reaction Networks
  Applied to Solid-Electrolyte Interphase Formation

 (固体電解質相間形成に適用される大規模反応ネットワークのための化学的に一貫したグラフアーキテクチャ)
 https://doi.org/10.26434/chemrxiv.13028105.v1
2)Improved accuracy and transferability of molecular-orbital-based machine learning : Organics, transition-metal complexes, non-covalent interactions, and transition states
 (分子軌道ベースの機械学習の精度と転送可能性の向上:有機物、遷移金属錯体、非共有相互作用、遷移状態)
 https://arxiv.org/abs/2010.03626
3)Maximum common property: a new approach for molecular similarity
 (最大の共通特性:分子類似性のための新しいアプローチ)
 https://jcheminf.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13321-020-00462-3

202010-前半 注目論文①

1)A Chemically Consistent Graph Architecture for Massive Reaction Networks
  Applied to Solid-Electrolyte Interphase Formation

 (固体電解質相間形成に適用される大規模反応ネットワークのための化学的に一貫したグラフアーキテクチャ)
 https://doi.org/10.26434/chemrxiv.13028105.v1

[エグゼクティブサマリー]

 複数の反応物を含む反応を複数の反応ノードに分割し、それぞれが他の前提反応物を生成するためのコストを含むようにして、すべての前提条件コストを反復的に解くことによって、複雑な化学反応系の経路解析を容易にした。リチウムイオン固体電解質中間相の形成で実証。

[kwh_rd100のコメント]

 化学反応ネットワーク内の任意の分子ノードへのベストな反応経路を特定した意義は大きい。将来的に、反応障壁を自動計算してネットワークに組み込む方法や、酸化還元過程で2つ以上の結合が変化する反応や、1つ以上の結合が同時に変化する反応を自動で追加する方法の開発が待ち遠しい。これらの開発により、様々な分野での新規材料・化学技術の開発・応用のための効果的な合成経路の改良が実現できる。

202010-前半 注目論文②

2)Improved accuracy and transferability of molecular-orbital-based machine learning : Organics, transition-metal complexes, non-covalent interactions, and transition states
 (分子軌道ベースの機械学習の精度と転送可能性の向上: 有機物、遷移金属錯体、非共有相互作用、遷移状態)
 https://arxiv.org/abs/2010.03626

[エグゼクティブサマリー]

 分子軌道に基づく機械学習 (MOB-ML)は、サイズの一貫性やエネルギーの不変性などの物理的原理を利用して、概念的に満足度の高く、有機分子や遷移金属を含む分子の総エネルギーや相対エネルギーなど、異なるデータセットの予測誤差を大幅改善を実現した。

[kwh_rd100のコメント]

 このMOB-MLの代表的な成果は、以下3点。第1は、QM7b-Tのデータセットのたった1%を用いて、残りの 99% のデータセットについて化学的精度を有する全エネルギーを算出した。第2は、遷移状態構造への外挿に成功した。例えば、反応物/生成物のような構造のみでトレーニングした場合に、マロンアルデヒド分子内プロトン移動のバリア領域を 0.35 kcal / mol以内に予測した。第3は、ガウス分散過程を使用したアクティブラーニング戦略である。QM7b-Tモデル拡張により、タンパク質バックボーン-バックボーン相互作用データセットの非共有相互作用を0.28 kcal / molの精度で記述できた。このような、電子構造理論に基づいて、任意の分子の全エネルギーや化学的性質を機械学習する方法の開発は地味ではあるものの大事な仕事である。

202010-前半 注目論文③

3)Maximum common property: a new approach for molecular similarity
 (最大の共通特性:分子類似性のための新しいアプローチ)
 https://jcheminf.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13321-020-00462-3

[エグゼクティブサマリー]

 原子のエレクトロトポグラフィック状態インデックスに基づき、最大共通下部構造の概念を使用して、記述子とフラグメントのアプローチを組み合わせて分子の3D構造の類似性値を定量化。異なるファミリー間で類似の化合物を見つける能力が高いメリットあり。抗マラリア活性を持つ化合物のサンプルの類似性で実証。

[kwh_rd100のコメント]

 この方法は、従来からの標準的手法 (SMSD、OBabel_FP2、ISIDA、およびSHAFTS)よりも有利であり、生物学的応答または生物学的活性を直接比較するのではなく、分子フラグメントまたはサブグラフの物理化学的特性間の類似性または近接性を理解するのに役立つため、重宝である。

さいごに

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