2021年05月前半 kwh_rd100の注目論文BEST3

 計算化学.comスタッフの kwh_rd100 です。各種の計算ソフト群をツールと割り切って使う立場から、2021年05月前半の注目論文 BEST3 を紹介させて頂きます。

1)Deep learning integration of molecular and interactome data
  for protein–compound interaction prediction
(タンパク質-化合物相互作用予測のための分子データとインタラクトームデータの深層学習統合)
https://doi.org/10.1186/s13321-021-00513-3

2)Modern Hopfield Networks for Few- and Zero-Shot Reaction Prediction
(少数およびゼロショット反応予測のための最新のホップフィールドネットワーク)
https://arxiv.org/abs/2104.03279

3)HamNet: Conformation-Guided Molecular Representation with Hamiltonian Neural Networks
(HamNet:ハミルトンニューラルネットワークによる立体配座誘導分子表現)
https://arxiv.org/abs/2105.03688

2021年05月-前半 注目論文①

1)Deep learning integration of molecular and interactome data
  for protein–compound interaction prediction
(タンパク質-化合物相互作用予測のための分子データとインタラクトームデータの深層学習統合)
https://doi.org/10.1186/s13321-021-00513-3

[エグゼクティブサマリー]

 アミノ酸配列の1D-CNN、化合物のECFP表現、およびタンパク質-タンパク質および化合物-化合物相互作用ネットワークのnode2vecによる特徴表現学習を組み合わせたエンドツーエンドの学習方法の提案。ウィルコクソン符号順位検定によって統計的に有意であることを確認。実装あり。https://github.com/Njk-901aru/multi_DTI.git

[kwh_rd100のコメント]

 分子構造データと複数の異種インタラクトームデータ(インタラクトーム (interactome) =interaction (相互作用) + ome (網羅的な) から作られた論文著者の造語)の統合により、タンパク質と化合物の相互作用予測の精度を相乗的に向上することに成功している。タンパク質-タンパク質および化合物-化合物相互作用ネットワークを、Support Vector Machine (SVM)等の2値識別ではなく、node2vecによる特徴表現学習で扱っているところがユニーク。実装も公開されており、ありがたい。

2021年05月-前半 注目論文②

2)Accurate Prediction of Free Solvation Energy of Organic Molecules via Graph Attention Network and Message Passing Neural Network from Pairwise Atomistic Interactions
(ペアワイズ原子相互作用からのグラフアテンションネットワークとメッセージパッシング
 ニューラルネットワークを介した有機分子の自由溶媒和エネルギーの正確な予測)
https://arxiv.org/abs/2105.02048

[エグゼクティブサマリー]

 溶質と溶媒のペアワイズの相互作用を考慮しているので、わずかな原子や結合の特徴だけで、溶媒和自由エネルギー計算に必要な物理化学的特性や分子特性を見つけることができる。予測精度と計算効率にも優れる。

[kwh_rd100のコメント]

 従来の溶媒和自由エネルギーのための深層学習法では、その大半が単一溶媒しか考慮していないが、この論文では、メッセージパッシングニューラルネットワーク(MPNN)(あるいは、グラフアテンションネットワーク(GAT))を溶質と溶媒のペアに別々に適用して、溶質と溶媒を表すベクトル特徴を連結して多層パーセプトロン(MLP)層で使用して、溶媒和自由エネルギーを予測している。高精度を実現したメカニズムがより明確になれば、薬物分子のスクリーニングに関する汎化性も向上するはず。続報にも期待したい。
  
 

2021年05月-前半 注目論文③

3)HamNet: Conformation-Guided Molecular Representation with Hamiltonian Neural Networks
(HamNet:ハミルトンニューラルネットワークによる立体配座誘導分子表現)
https://arxiv.org/abs/2105.03688

[エグゼクティブサマリー]

 コンフォメーションの直接入力ではなく、物理学的に着想を得たモジュール(Hamiltonian Engine)を用いたコンフォメーション予測手法の提案。従来の幾何学的アプローチや Message-Passing Neural Network(MPNN)より優れる。

[kwh_rd100のコメント]

 Hamiltonian Engineは、プロセス全体で微分可能であり、このエンジンを学習するために、並進および回転の不変性を持つ新しい損失関数が提案されている。更に、このHamiltonian Engineの暗黙的なコンフォメーションも取り込むことができるフィンガープリント・ジェネレーターを提案しており、素晴らしい。その結果として一般的なメッセージパッシングニューラルネットワーク(MPNN)より解釈性に優れるモデル構築に成功している。学習可能なポテンシャル等の説明や、離散化処理に関する続報にも期待したい。
 

さいごに

読者各位の計算化学ライフの更なる充実に少しでも貢献できれば嬉しいです。 記事中に間違い等ある場合は、コメント欄、twitter またはメールにてお知らせいただけると助かります。また、このような話題を取り上げて欲しいなどのリクエストも大歓迎です。可能な限り、前向きに対応致します。

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