2021年05月後半 kwh_rd100の注目論文BEST3

 計算化学.comスタッフの kwh_rd100 です。各種の計算ソフト群をツールと割り切って使う立場から、2021年05月後半の注目論文 BEST3 を紹介させて頂きます。

1)Autonomous artificial intelligence discovers mechanisms of molecular self-organizationin
virtual experiments
(自律型人工知能が仮想実験で分子の自己組織化のメカニズムを発見)
https://arxiv.org/abs/2105.06673

2)Predicting antimicrobial activity of conjugated oligoelectrolyte molecules via machine learning
(機械学習による共役オリゴ電解質分子の抗菌活性の予測)
https://arxiv.org/abs/2105.10236

3)Accurate and scalable graph neural network force field and molecular dynamics
with direct force architecture
(精密でスケーラブルなグラフニューラルネットワーク力場とダイレクトフォースアーキテクチャに
よる分子動力学)
https://www.nature.com/articles/s41524-021-00543-3

202105-後半 注目論文①

1)Autonomous artificial intelligence discovers mechanisms of molecular self-organizationin
virtual experiments
(自律型人工知能が仮想実験で分子の自己組織化のメカニズムを発見)
https://arxiv.org/abs/2105.06673

[エグゼクティブサマリー]

 多体の相互作用が協調して起こる分子の自己組織化について、複雑な分子事象のサンプリング方法を適応的に学習し、その場で定量的なメカニズムモデルを構築できる、深層強化学習と遷移経路理論を用いたAIエージェントの提案。溶液中のイオン結合、ガスハイドレート結晶の形成、膜タンパク質のアセンブリなどで性能実証した。

[kwh_rd100のコメント]

 AIによるサンプリングにより、エージェントの学習サイクルを短縮し、何桁もの時間スケールのギャップを克服している。このため、分子動力学(MD)シミュレーションのように莫大な計算コストは不要である。その上で、記号的回帰により、自己組織化メカニズムの説明可能性を高めるという発想が素晴らしい。このAIエージェントの汎用性が明らかになるのが待ち遠しい。

202105-後半 注目論文②

2)Predicting antimicrobial activity of conjugated oligoelectrolyte molecules via machine learning
(機械学習による共役オリゴ電解質分子の抗菌活性の予測)
https://arxiv.org/abs/2105.10236

[エグゼクティブサマリー]

 共役オリゴ電解質分子抗菌活性を予測する、4つの部分(分子指紋の表現、特徴量の絞り込み、MLモデルのペアリング、記述子の重要度分析)からなるフレームワークの提案。基礎メカニズムに関する知識なしでも、記述子は5,305個から21個(40%以上は分子の3次元形状関連)に再帰的削減に成功し、決定係数R2=0.65を達成している。

[kwh_rd100のコメント]

 共役オリゴ電解質分子を代表例として、新しい抗生物質クラスの課題に適用可能な機械学習アプローチが提示されている。ドメインに最適な分子表現が抗菌活性の良好な予測の鍵であることに異論はないが、共役オリゴ電解質以外の場合でも同様に分子の3次元形状を反映する表現が最も重要という結論になるのか否か、続報を期待したい。

202105-後半 注目論文③

3)Accurate and scalable graph neural network force field and molecular dynamics
with direct force architecture
(精密でスケーラブルなグラフニューラルネットワーク力場とダイレクトフォースアーキテクチャに
よる分子動力学)
https://www.nature.com/articles/s41524-021-00543-3

[エグゼクティブサマリー]

 座標空間に対して回転共変なローカル原子環境から自動抽出された特徴から原子力を直接予測できるフレームワーク(GNNFF)の提案。原子フィンガープリントの計算と計算負荷が大きいポテンシャルエネルギー表面(PES)の微分計算の両方が不要になっている。リチウムイオン拡散係数がab initio分子動力学(AIMD)から直接得られるものの14%以内で一致している。

[kwh_rd100のコメント]

 開発したGNNFFのスケーラビリティ、柔軟性、および予測精度は優れている。特に、小規模システムでトレーニングして、大規模システムに適用しても、SchNetやDCFなどの既存モデルの遜色ない結果を得ることができるスケーラビリティは驚異的である。このGNNFFが、広く異なる原子論的研究に展開されることを願う。

さいごに

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