2021年06月前半 kwh_rd100の注目論文BEST3

計算化学.comスタッフの kwh_rd100 です。各種の計算ソフト群をツールと割り切って使う立場から、2021年06月前半の注目論文 BEST3 を紹介させて頂きます。

1)Compositionally restricted attention-based network for materials property predictions
 (材料特性予測のための構成的に制限された注意ベースのネットワーク)
 https://www.nature.com/articles/s41524-021-00545-1

2)Multiresolution Graph Variational Autoencoder
 (多重解像度グラフ変動オートエンコーダー)
 https://arxiv.org/abs/2106.00967

3)SE(3)-equivariant prediction of molecular wavefunctions and electronic densities
 (SE(3)-分子波動関数と電子密度の同変予測)
 https://arxiv.org/abs/2106.02347

2021年06月-前半 注目論文①

1)Compositionally restricted attention-based network for materials property predictions
 (材料特性予測のための構成的に制限された注意ベースのネットワーク)
 https://www.nature.com/articles/s41524-021-00545-1

[エグゼクティブサマリー]

 材料特性予測のタスクに自己注意メカニズムを導入し、化学的環境に基づいて個々の元素表現を動的に学習および更新により、組成情報のみを使用して材料特性を高精度予測するCrabNetの提案。実装あり。https://github.com/anthony-wang/CrabNet

[kwh_rd100のコメント]

 自己注意メカニズム導入したこのこのCrabNetならば、元素のドーピングにも対応できることが、組成物中の元素の存在比によってスケーリングする、化学組成ベースの特徴ベクトルに基づくアプローチとの大きな差異であり、感嘆するポイントである。当然ながら、元素のドーピングがない系であっても、このCrabNetは一貫して良好なMAEスコアを示している。材料問題における自己注意メカニズムの有用性が完全に明らかになる日が待ち遠しい。

2021年06月-前半 注目論文②

2)Multiresolution Graph Variational Autoencoder
 (多重解像度グラフ変動オートエンコーダー)
 https://arxiv.org/abs/2106.00967

[エグゼクティブサマリー]

 多解像度かつ等変量でグラフを学習・生成する初めての生成モデルである多重解像度グラフネットワーク(MGN)をベースに構築された自動エンコーダーMGVAEの提案。グラフのマルチスケール構造の考慮がポイント。QM9やZINCで性能実証した。

[kwh_rd100のコメント]

 MGVAE は、MGN に基づいて階層的生成モデルを構築し、粗いグラフの階層を変分的に自動符号化しており、ノードの順序付けに関してエンド ツー エンドの順列等価になっている。この方法により、引用グラフのリンク予測、分子特性を予測するための教師なし分子表現学習、分子生成、一般的なグラフ生成、グラフベースの画像生成などの生成タスクで成功を収めている。適用範囲の明確化が次の課題である。

2021年06月-前半 注目論文③

3)SE(3)-equivariant prediction of molecular wavefunctions and electronic densities
 (SE(3)-分子波動関数と電子密度の同変予測)
 https://arxiv.org/abs/2106.02347

[エグゼクティブサマリー]

 幾何学的な点群データで動作する深層学習アーキテクチャのための一連の一般的なSE(3)-equivariant演算とビルディングブロックを用いて、波動関数電子密度を正確に予測するPhiSNetの提案。低精度の波動関数で学習したモデルを、はるかに高い理論レベルで計算された特性を予測するように調整できる。

[kwh_rd100のコメント]

 計算コストのかかる ab initio 計算をバイパスできるようになった昨今、波動関数と電子密度を正確に予測できることは大きな魅力である。しかし、ペア相互作用を計算するために、すべての原子のペアワイズの組み合わせを考慮する必要があり、このPhiSNetは(現状では)原子数が非常に多いシステムには不向きとなっている。精度低下せずに近似できる方法の適用が待ち遠しい。

さいごに

  読者各位の計算化学ライフの更なる充実に少しでも貢献できれば嬉しいです。 記事中に間違い等ある場合は、コメント欄、twitter またはメールにてお知らせいただけると助かります。また、このような話題を取り上げて欲しいなどのリクエストも大歓迎です。可能な限り、前向きに対応致します。

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