2021年07月前半 kwh_rd100の注目論文BEST3

計算化学.comスタッフの kwh_rd100 です。各種の計算ソフト群をツールと割り切って使う立場から、2021年07月前半の注目論文 BEST3 を紹介させて頂きます。

1)Geometry-aware Transformer for molecular property prediction
 (分子特性予測のための形状認識トランスフォーマー)
 https://arxiv.org/abs/2106.15516v1

2)Atomic structure optimization with machine-learning enabled interpolation
 between chemical elements
 (機械学習による原子構造の最適化により、化学元素間の補間が可能になりました)
 https://arxiv.org/abs/2107.01055

3)Ensemble learning-iterative training machine learning for uncertainty quantification
 and automated experiment in atom-resolved microscopy
 (アンサンブル学習-原子分解顕微鏡における不確実性の定量化と
 自動実験のための反復トレーニング機械学習)
 https://doi.org/10.1038/s41524-021-00569-7

2021年07月-前半 注目論文①

1)Geometry-aware Transformer for molecular property prediction
 (分子特性予測のための形状認識トランスフォーマー)
 https://arxiv.org/abs/2106.15516v1

[エグゼクティブサマリー]

 分子コンフォメーションを、原子間距離属性によって結合された個別の原子シーケンスとして表現し、これをTransformerアーキテクチャでトレーニングして、原子ペアのすべての空間配置を維持しつつ、分子内のあらゆる原子対間の長距離相互作用を表現できるGeometry-aware Transformer(GeoT)の提案。QM9とMD17で性能実証した。

[kwh_rd100のコメント]

 従来、グラフ畳み込みニューラルネットワーク(GNN)は、局所的な領域のみカバーするため、原子の長距離相互作用などを扱うことは相当困難との見方が大勢であった。しかし、本手法ではTransformer利用により、距離&角度情報を用いた高いコストの計算結果と遜色ない精度レベルを達成しており、素晴らしい。実装が公開され、長距離相互作用にかかる様々な化学現象が解明される日が待ち遠しい。

2021年07月-前半 注目論文②

2)Atomic structure optimization with machine-learning enabled interpolation
 between chemical elements
 (機械学習による原子構造の最適化により、化学元素間の補間が可能になりました)
 https://arxiv.org/abs/2107.01055

[エグゼクティブサマリー]

 ガウス過程によるベイズ最適化に基づいた化学元素間の補間により、原子の位置化学的秩序同時最適化するICE-BEACONの提案。元素の割合の最終的な値が、実際の原子材料のように0または1に近いのが特徴。Au-Cuバルクシステム、CO吸着を伴うCu-Ni表面、およびCu-Niクラスターで性能実証した。実装はGPAtompackage(https://gitlab.com/gpatom/ase-gpatom/)に含まれている。

[kwh_rd100のコメント] 

 元素フラクション導入により、多元素系における性能を大幅改善しており、エネルギー障壁なしに異なるタイプの原子を切り替えることができる。よって、準安定状態に陥ることなく、大域的な最適化に成功しており、素晴らしい。吸着系などの扱いが難しい系についての精度のさらなる向上により、本手法の真価が発揮されると思われる、期待の新手法である。

2021年07月-前半 注目論文③

3)Ensemble learning-iterative training machine learning for uncertainty quantification
and automated experiment in atom-resolved microscopy
 (アンサンブル学習-原子分解顕微鏡における不確実性の定量化と
 自動実験のための反復トレーニング機械学習)
 https://doi.org/10.1038/s41524-021-00569-7

[エグゼクティブサマリー] 

 顕微鏡データの深層/機械学習のPytorchベースのパッケージAtomAIによる、機器固有のライブラリと一般的な物理分析を橋渡しする環境の提案。自動実験中に、分布から外れたドリフトを迅速に補正できる。実装あり。https://github.com/pycroscopy/atomai

[kwh_rd100のコメント]

 不確実性の定量化を深層学習分析に組み込み、対象のデータセットでのネットワークの検出限界を高めて、大幅に縮退したデータに存在する特徴をクローズアップして、これまで認識されていなかった特徴を明らかにできるのが本手法の最大の魅力である。光学および化学イメージングを含む他のイメージング領域の機械学習への適用結果の蓄積を期待したい。

さいごに

  読者各位の計算化学ライフの更なる充実に少しでも貢献できれば嬉しいです。 記事中に間違い等ある場合は、コメント欄、twitter またはメールにてお知らせいただけると助かります。また、このような話題を取り上げて欲しいなどのリクエストも大歓迎です。可能な限り、前向きに対応致します。

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