(トップ画像は、KS物理専門書公式ページより転載)
量子化学の基礎理論や Gaussian の使い方について書かれた本は多く存在しますが、あまりにも基礎的すぎたり、または実践的すぎたりすることがあります。そのため、DFT 計算で実際に使用する汎関数の解説は書籍はおろかネット上にもあまり無く、元論文を読むしかないという場合が多いです。DFT 計算が研究で使われることが一般的になってきましたが、まだまだ全くの門外漢が始めるにはには敷居が高いです。その大きな原因は良質な参考書が少ないという点に尽きると思います。そこで、当サイトでは管理人が良いと思った参考書を紹介していきたいと思います。
今回紹介する密度汎関数法の基礎 (KS物理専門書) では、各汎関数の成り立ちが数式を交えてわかりやすく書かれております。よく分からずに先行研究に従って B3LYP を使用していた人などは、是非本書を手に取ってみてください!
内容
本書は 7 つの章から構成されています。
第 1 章では、量子化学の歴史に沿って、シュレーディンガー方程式、波動関数の解釈、分子の並進運動、振動運動、回転運動の量子化など量子化学の基礎的な事柄について分かりやすく解説されています。第 2 章では、ハートリー・フォック法、スレーター行列式、ローターン方程式などの解説も充実しています。gaussian の log ファイルを読み解く際にも重要となる事柄です。この部分に関してさらに詳しく勉強したいということであれば、別の量子化学の教科書を読むことをお勧めします。手軽なところですと、実験化学講座などがオススメです。第 3 章は、ハートリー・フォック法の問題点である電子相関が解説されています。
第 4 章では、コーン・シャム法について解説しています。「DFT 計算とは何か?」ということをうまく説明できない人に本章を読むことをお勧めします。特に、「DFT 計算は近似が入っているから認めない」という他人の意見を鵜呑みにして、自分の意見のように発言している人をよく見かけます。そのような人に限ってどの部分が不正確なのかを知らないことが多いと思います。そのような疑問も本章を読めば解決します。
第 5 章は様々な汎関数についての解説です。汎関数の近似方法による分類の仕方、それぞれどのような特徴・問題点があるかについて数式を用いて理論的に解説しています。汎関数についてこれほど詳しく書かれている書籍は他に存在しないのでは?と思います。
第 6,7 章はTD-DFT 法や 長距離補正の説明など関係する人だけ読めば良いと思います。
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【追記】
元記事への大量アクセスが検出されましたので、記事を作り直しました。
元記事投稿日 2016年10月19日