JCIM に計算化学分野での女性の割合が増えているという論文が出ていましたので、簡単に紹介したいと思います。
ちなみに管理人がアメリカで所属していた研究室は 7 割くらいが女性でした。
“Computational Chemistry: A Rising Tide of Women”
M. Katharine Holloway & Georgia B. McGaughey
J. Chem. Inf. Model. in press. DOI: 10.1021/acs.jcim.8b00170
概要
著者らは、メディシナル・ケミストリー (Huryn, D. M.; et al. ACS Med. Chem. Lett. 2017, 8, 900) や 計算生物学 (Bonham, K. S.; Stefan, M. I. PLoS Comput. Biol. 2017, 13, e1005134) での同様の研究に触発されて、計算化学におけるジェンダー多様性について調べてみることにしました。まず最初に、コンピュータ支援薬品設計と計算化学分野でのゴードン研究会議の出席/参加率と、アメリカ化学学会の計算化学部門のメンバーシップという 2 つの異なる環境における歴史的人口統計を調べました。すると、計算化学分野における女性研究者の割合が過去40年間に着実に増加しており、最近では約 25% であり、これは隣接するコンピュータ科学および薬学の分野をわずかに上回ると思われます。“a rising tide lifts all boats” という古いスローガンに従えば、女性科学者の潮流が計算化学の分野に大きな影響を与えているということになります。この数字が改善し続けるようにする戦術をこの論文では強調しています。
内容
上図に示すように計算化学分野での女性の割合は着実に増えてきています。これは、コンピューターサイエンスは女性には不向きという従来の見方を打ち破るものです。
computational biology 分野の女性の割合は、biology 分野の女性の割合よりも低いです。しかし、computational chemistry 分野での女性の割合は、これらよりも高いそうです。この理由については、はっきりとは分かっていません。
感想
計算化学は実験系に比べて肉体的負荷が少ないと思います。管理人が昔アメリカの研究室にいた時は、リモート、つまり自宅から研究室のクラスターやスーパーコンピューターに接続して働いている人もいました。産休で自宅から働いている人もいましたし、結婚した配偶者に付いて違う州や国に行ってしまった人もいました。リモートで働くことができるというのは、実験系ではあり得ない素晴らしいことだと思います。
また、実験装置などが無く危険が無いため、乳幼児を研究室に連れてきている人もいました。これも肉体的不安が無いことや化学物質を扱わないから可能なのだと思います。幼少期から gaussian やセミナーで計算化学に触れることが出来るなんて羨ましいですね。
有機化学や生化学系に興味がある人でワークライフバランスを重視したいのであれば、計算化学は最良の選択だと思います。夕食前に家に帰り、残りの仕事は家で行うということも可能です。
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