化学系の研究者が目指すトップジャーナルと言えば JACS です。Nature Chemistry の方がインパクトファクターが高かったり、Nature communication の方がプレスリリースがよく出たりしますが、やっぱり ”JACS を何報出したか?” が一般的な評価の基準になります。
例えば、「ドイツのメルケル首相は量子化学の Ph.D を持っている」と言われてもピンと来ませんが、「ドイツのメルケル首相は JACS のファースト持っている」と言われれば、「凄いね!」となります。ちなみに、下記の論文です。
“Evaluation of the rate constant for the SN2 reaction fluoromethane + hydride .fwdarw. methane + fluoride in the gas phase” Angela. Merkel, Zdenek. Havlas, & Rudolf. Zahradnik
J. Am. Chem. Soc., 1988, 110, 8355–8359.DOI: 10.1021/ja00233a012
それくらい影響のあるジャーナルなので、多くの人が論文を投稿します。そのため、Reviewer に回る前に Editor Reject なんてことも多くあります。
今回は、JACS の Editor Reject を食らった際の怒りを表す便利な英単語をご紹介します。
論文アクセプトまでの最初の関門
私がアメリカ留学でお世話になった先生も JACS のことを the best chemistry journal in the world と言っていました。
そんな世界中の化学者が目指す JACS に論文を掲載してもらうための最初の関門は Editor です。どんなに自身のある内容でも Reviewer に回してもらえなければ終わりです。
そう、一番問題になるは、JACS の chief editor Peter J. Stang です。
JACS の Editor と言えば、化学の世界では大変な権力者であるわけだから、さぞかし人格的にも優れていて、誰に対しても公平な人物なだろう、、、とついつい想像してしまいますよね?
しかし、管理人の周りで Stang のことをよく言っている人を見かけたことは・・・。日本に限らず、管理人が留学していた時もみんなあまり良いことは言っていま・・・。
Stangulation
みなさんは、strangulation (ストランギュレーション)という英単語をご存知でしょうか?絞殺という意味の名詞です。動詞形は strangulate (ストランギュレート) です。
管理人の周りの人は、この単語と Stang の名前の発音を組み合わせて、JACS の editor reject を食らうことを STANGulation (スタンギュレーション) と言っています。
使い方を以下にお示しいたします。
友人「そう言えば、あの研究どうなった?もうJACS に投稿したの?」
自分「STANGulation だったよ。。。」
友人「、、、まあ、しょうがないよ。あいつ頭狂ってるから。」
自分「だよな!別の journal に出してみるわ。」
という感じです。
なぜ reject されるのか?
なぜ editor reject を食らってしまうのかについては、様々な理由があります。純粋に論文のクォリティが低い場合というのが主たる理由であると信じたいですが、納得できない場合も多々あるのが現実です。
ピュアな計算化学の論文で STANGulation を受ける理由としてよくあるのは、
「実験データの無い、計算だけの論文は受け付けない。」
というものです。この場合、反論のしようがありません。(管理人の経験では、上記の理由で STANGulation 食らったのに、Angew にほぼ revise なしで通ったことがありますので、論文のクオリティとは関係ないと思います。)
一方で実験データなしの計算化学のみで JACS に載っている論文もよく見かけます。運よく Ken Houk が handling してくれたりすると、reviewer に回ると言う話も聞きますが、どうなんでしょう?
(でも、先ほど editorial board のページをみたら Ken houk の名前がありませんでした。辞めたんですかね?もっと前の話ですが、Truhlar も editorial board からいなくなってしまいましたよね。。。どんどん厳しくなっていきますね。)
あと、管理人は留学時代に論文のタイトルについてアドバイスを受けました。どんなに新規な結果が論文中に書いてあっても、Stang の中での NG ワードがタイトルに入ってるとすぐに stangulate されると言われました。
管理人の論文タイトルに含まれていた NG ワードは、やや時代遅れっぽい研究領域を示す単語でした。
こうすると Editor Reject を受けにくくなるよというアイディアをお持ちの方は、是非コメント欄にお書きください。
記事中に誤りなどありましたら、コメント欄、twitter、またはメールにてお知らせいただければ幸いです。