学振 PD の待遇は、特任助教以下?!

管理人は、日本学術振興会 特別研究員 PD特任助教の両方を経験しています。

学振 PD 特任助教は、一般の人からすると特任助教の方が言葉の響き的に格上な感じがしますが、どちらもポスドク相当のポジションであり、大差は無いとアカデミックでは考えられています。(注意!特任助教の扱いは大学によって大きく異なります。ポスドク同等扱いのところが大多数ですが、研究室主宰者(PI)のところもあり、専任助教と同じ扱いだが任期有りという意味で「特任」と付けているだけのところもあります。)

むしろ、学振 PD は自分の力でお金を勝ち獲って来ている一方で、「特任助教はボスのお金で雇ってもらっているという」側面が強いため、学振 PD の方が若干上であるという風潮もあります。(しかし、実際には大差ありません。)

どちらが優れているのかという結論を出すことは難しいですが、待遇面では学振 PD の方が大きく劣っているということは断言できます。今回の記事では、その点について詳しく述べていきたいと思います。

給料

管理人のいた大学では、ポスドク(特任研究員)や特任教員の給料には上・中・下とランクが決められていました。私は「中」ランク採用だったので、月給40万円でした。また毎年、12 万円(月額 1 万円)ずつ昇給していきましたので、すぐに年収 500 万円を超えました。

ちなみに隣のラボで「上」ランクで採用されていた特任助教は、月給 50 万円年収 600 万円)でした。ただし、特任教員にはボーナスはありません。

一方で、学振 PD の時は月給 36.4 万円です。しかも 3 年間昇給なしです。。。圧倒的低所得者層ですよね。また、後述のとおり社会保障なども存在しませんので、それらを全て勘案すると学振 PD の給料は特任助教に比べると年間 50 〜 100 万円くらい低いイメージです。

ただし、特任助教の給料は大学によって大きく異なります。月額 20 万円という大学もありますし、学振 PD と同じ額にしてある大学もあると聞きます。

(ちなみに、管理人の同級生で博士号とって企業に就職した人たちの平均は、月給 40 万円 + ボーナスで年収 600 万円程度でした。アカデミックに残るには貧困耐性が必要だと思います。)

社会保障

特任助教は、大学に雇用されているため、社会保障もしっかりしています。毎月の給料からは、退職積立金厚生年金国民年金健康保険料(共済)などがしっかりと天引されます。

一方で、学振 PD は大学との雇用関係は存在せず、また、日本学術振興会との雇用関係もないという、法律違反じゃないかとも思える立場にあります。

そのため、学振 PD は各自で国民健康保険に加入する必要がありますし、年金も国民年金を各自で支払わなければなりません。(給料からの天引はありません。)つまり、無職・ニートの人達と同じ待遇です。

身分証

特任助教は、「特任」とはついているものの一応教員扱いされます。学部のホームページやシラバスにもきちんと名前が明記されますし、大学から支給される身分証も「教職員」のカードです。

一方、学振 PD は教員ではないため、学部のホームページの教員紹介にも載りませんし、授業を行ってもシラバスに名前は載りません。また、身分証も「研究者証」というワンランク下のものになります。

事務の人からも特任助教は「〇〇先生」と呼ばれるのに対し、学振 PD は「〇〇様」と呼ばれます。

仕事上の待遇の差

大学で研究を行っていると各種の申請書を提出しなくてはなりません。例えば、「計算機の使用申請書」とか 「VPN 使用申請書」などなど。

特任助教だと自分の名前で申し込めるのですが、学振 PD だと学生と同等の扱いになるため、自分のボスのサインとハンコが必要になります。非常に面倒です。

また、大学で提供している Microsoft OfficeChem Draw なども雇用関係が無いとの理由により使用できません。この点に関しては、学生以下です。。。(管理人は研究遂行費で Microsoft Office を購入しました。)

場合によっては、大学のメールアドレスも提供されないこともあります。(管理人も、最初事務の人と交渉した時メールアドレスの交付はできませんと言われましたが、その後自分のボスとかもっと偉い先生などにお願いして、事務の人に交渉してもらいメールアドレスをもらえるようになりました。。。)

また、特任助教には学務関係のメールが来ます。しかし、特任教員にはほとんどメールは来ません。メールが来ることで良いことの一つは、研究費関連のメールを見逃し難いことです!(管理人のボスは、重要なメールの転送すら忘れてしまう人だったので、知らないうちに研究費や奨学金の締切が過ぎていたこともありました。。。そのことに気づいたのは特任助教になってからでした。)

科研費について

特任助教には、専任義務と言うものが存在するため、基本的には科研費の応募資格はありません。

しかし一般的には、給料の 1% を校費などで支払い、専任義務逃れをし、科研費の応募資格を与えてるということが行われています。(アホらしい仕組みですよね。普通に応募資格あげれば良いのに。)

でも、管理人のようにボスが無能だと上記の仕組みを知らず、科研費の応募資格が与えられない場合があります。。。(もしも特任助教の方で科研費に応募しちゃダメと言われたら、自分で交渉してみましょう!また、同じ特任助教であっても、雇われている予算の種類によっては専任義務が生じず、自由に科研費に応募できます。例えば、大学内の競争的研究費によって雇われいる方など。)

一方で、学振 PD には、年間 150 万円程度の研究費が支給されます。また、科研費の応募資格もあります。

ただし、学振 PD が科研費に申し込む際は、科研費応募資格確認書というものを事務に提出しなくてはいけません。管理人も、事務のいろんな人にスタンプラリーして回りました。本当にハンコっていらない仕組みですよね!

特任助教と学振 PD どちらが良いのか?

大学にもよりますが、待遇の面でいくと特任助教の方が圧倒的に良いです。

しかし、研究費など自由に研究テーマを設定できるという点では学振 PD が良いです。

つまり、貧困待遇であっても自由に研究をしたいという人には学振 PD がお勧めです。

将来的なことを考えると、どちらにも良い点悪い点があります。

まず、次のポジションに応募する際には、論文数はもちろんのこと、教育経験科研費獲得実績が求められます。

教育実績では、授業を担当している分、特任助教の方がほんのわずかですが、有利です。(でも、特任助教のやる授業なんて、ボスの担当している授業の1、2コマを代講する程度のことなので、大して評価されませんが。。。)

科研費獲得実績ですが、特任助教で科研費の応募資格が与えられていない場合は、人生デッドエンドになりますので、ご注意を!ただし、内部昇進で「特任助教→助教」がお約束されている場合は、この限りではありません。

学振 PD の場合は、すでに学振 PD + 特別研究員奨励費を獲ったという実績がありますので、若干有利です。

それぞれにメリット・デメリットがありますので、どちらが有利かというのは、審査する研究機関次第です。

ただし、特任助教から学振 PD に身分変更するのはお勧めしません。その後、教員公募などに応募した際に必ず理由を聞かれます!

まとめ

アカデミックの世界では、学振 PD 特任助教も大差ない、または自分でお金をとってきている分だけ学振 PD の方がほんの少しだけ良いという評価があります。

しかし、それぞれに良い点悪い点があり、どちらの方が良いとは断言できません。ただ一つ言えるのは、学振 PD の待遇は最底辺貧困層だということです。

また個人的には、DC1, DC2, 海外学振 の3つは大変優れていると思いますし、撮った人を尊敬しますが、学振 PD はそれほど難しくないという印象です。。。(ただし、SPD は除く。)

どちらのポジションもアカデミックの入り口なので、早く上のポジションに移れるように頑張りましょう!

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