大統領予算というと日本ではメキシコとの国境に壁を作ることばかり報じられておりませんが、科学技術分野ではエクサスケールコンピューターに 6 億 3,600万ドル (約 672 億円) の予算がつきそうなことが話題となっております(確定ではない)。
TOP500 の NEWS 欄には、毎週スーパーコンピューターに関する最新情報が報告されています。残念ながら、日本のメディアではほとんど報道されません。
本ウェブサイトでは、それらのニュースを定期的に日本語で紹介していきます。
今回紹介する記事は、
“President’s Budget Requests $636 Million for US Exascale Computing”
February 28, 2018
概要
議会が 2019 年度のトランプ大統領の予算要求に OK! を出せば、米国エネルギー省(DOE)はエクサスケールコンピューティングのために 6 億 3,600 万ドルを獲得するでしょう!今回の要求額は 2017 年度の資金調達水準を 3 億 7,600 万ドル上回ります!
6 億 3,600 万ドルは、アメリカの 2021 年から 2022 年にかけてエクサスケール・コンピューティングへの最初の進出を支援するために予定されています。DOE の Office of Science は、合計 4 億7,300 万ドルを受け取り、残りの 1 億 6300 万ドルは国家原子力安全局(NNSA)に送られます。 この予算は、エクサスケール用のソフトウェア開発の支援のために費やされます。
予算は、アルゴンヌ国立研究所とオークリッジ国立研究所の 2 つのエクサスケールシステムの研究、開発、設計にも使われます。 アルゴンヌ国立研究所の場合、おそらく2021 年に導入予定のIntel / Crayスーパーコンピュータである Aurora を指しています。オークリッジ国立研究所も、Frontier というスーパーコンピューターを 2021 年に設置する計画ですが、その名前以外はまだわかっていません。
エクサスケール・コンピューティングのための予算 4 億 7,300 万ドルは、より大きな Advanced Scientific Computing Research (ASCR) のためのより大きな 8 億 9,900 万ドルの予算から出されています。エクサスケール・コンピューティング以外への ASCR の予算はコンピュータサイエンスと数学、HPC のシミュレーションとモデリングの改善、量子情報技術とニューロモルフィックコンピューティングなどの基礎研究に割り当てられており、 またデータサイエンスなど DOE のその他のプロジェクトにも使われます。
NNSA のための 1 億 6,300 万ドルのうちのいくつかは、将来のエクサスケールスーパーコンピューターへの準備に使用するよう指定されています。 具体的には、2 つのインフラストラクチャプロジェクトに合計 4,700 万ドルが割り当てられている。Los Alamos National Laboratory(LANL)の Exascale Class Computer Cooling Equipment(EC3E)プロジェクトに2,400 万ドル、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の ECFM(Exascale Computing Facility Modernization)プロジェクトに 2,300 万ドル。 LLNL では、インフラストラクチャのアップグレードは、2023 年に出荷予定のエクサスケールコンピューターの “El Capitan” を見越して計画されています。
また、量子コンピューター研究のために 1 億 500 万ドルを要求しています。これは、量子コンピューターや量子センサー技術を含む量子情報科学の発展分野における米国のコンピテンシーと競争力の構築の緊急性に対応するために使われる予定です。 初期の段階では、量子コンピューティング技術と量子センシングをどのようにして難しい科学の問題に適用できるかを研究することに焦点を当ています。 具体的には、リアルタイム追跡のための量子パターン認識などの分野における既存の研究や指数関数的に増加する情報の格納技術、量子化学、および核物理学のための量子アルゴリズム、 タンパク質折りたたみなどの生物学的システムのシミュレーションなどの研究に使われる予定です。 量子コンピューター予算は、すべて Office of Science を通じて配分されます。
詳細は、Budget Document に書いてあります。
感想
メキシコとの壁のニュースの方がインパクトは強いでしょうが、国内外で日本の科学研究への予算縮小が叫ばれているのですから、こういったエクサスケールコンピューターのニュースも報道するべきだと思います。
日本でも Pezy computing やエクサスケール社がエクサスケールコンピューターの開発を目指していましたが、残念ながら社長が逮捕されてしまいました。。。研究開発に遅れが出ることは必至です。中国とアメリカのどちらが先にエクサスケールコンピューターを開発できるか、ということになりそうですね。
現在 Top500 で 2 位の中国の天河二号は、大幅なアップデートでもうエクサスケールを超えているのではという噂もあります。いずれにせよ、この分野で日本が遅れを取っていることだけは確かだと思います。
エクサスケールコンピューターが開発されると、可能になる研究がたくさんあります。この点に関してもゴードンベル賞などをもっと報道すべきだと思います。こういう重要なことが普段報道されていないため、スーパーコンピューターの予算を削ろうとする人が出てくるんだと思います。
記事中に間違い等ある場合は、コメント欄、twitter またはメールにてお知らせいただけると幸いです。
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