半経験的手法

半経験的分子軌道法は Hartree-Fock-Roothaan方程式??を解く点では非経験的分子軌道法と同様である。

(1)   \begin{equation*} FC = SC\varepsilon \end{equation*}

F: Fock 行列
C: 原子軌道行列
S: 重なり積分行列
\varepsilon: エネルギー固有値対角行列

半経験的手法では、方程式 (1) を解く過程で 2 電子積分の微分重なりを無視し、さらに原子やある典型的な分子の実験値(イオン化ポテンシャル, 電子親和力,双極子モーメントなど)を積分計算の代わりにパラメータとして用いているため、計算コストが大幅に低くなっている。
一方、非経験的手法では、全ての積分を無視せずに解くため、計算コストが高くなっている。

Fock 行列を解くための計算コストは、基底関数の数の 4 乗に比例する。これは、F を得るために必要なに電子積分計算の数である。半経験的手法は、このに電子積分の数を減らすことにより、計算コストを軽減している。ab initio 法でも線形スケーリングにより計算コストを軽減しているが、それでも半経験的手法に比べると大きな計算コストが必要である。

半経験的手法は、計算コストを軽減する第一の手法として原子価軌道の電子のみ考慮している。原子価軌道については、中世分子の電子を記述するのに必要な最小限の基底関数を使用しています。内殻電子軌道は原子核や内殻電子に由来する力をモデル化した関数を用いて近似しています。
そのため半経験的手法では、水素は基底関数を一つしか持ちません。また、第二周期第三周期の原子は基底関数を 4 つしか持ちません(s-, p_x,p_y,p_z)。

半経験的手法での中心的な試みは、Zero Differential Overlap (ZDO)です。

代表的な半経験的手法

随時書く手法についての解説を書いていきます。

  • AM1
  • PM3
  • PM6
  • PM7
  • NDDO
  • INDO
  • CNDO
  • MINDO
  • MNDO
  • OMx

半経験的手法のメリットと制限

どのように使うか?

ある系について計算を始める際、初期構造を得るために半経験的手法で計算します。Gauss View 上で手書きで書くよりも PM6 などで計算した方が構造が綺麗になるという感じです。

昔の論文では、PM6 で TS を求めてエネルギーまで議論しているものもありますが、現在では認められていません。

少なくともエネルギーの正確性は低いため、反応性の議論などは不可能でしょう。

また、PM6 の場合などではカチオン、アニオン、重金属などを含んでいると最適化構造があまり良くない印象があります。それでも、手書きで書くよりはマシな気がします。