HCTH

Nicholas C. Handy のグループにより開発された半経験的汎関数。B97 半経験的汎関数をさらに改良したもの。

内容

DFT 計算は、計算化学の分野で非常に重要なアプローチである。Kohn-Sham (KS)法実装は交換相関汎関数に大きく依存する。これまでの研究により 局所勾配近似(LDA) は不正確であることが知られていた。この分野の研究を大きく前進させたのは、一般化勾配近似(GGA)を用いた B88 汎関数の登場である(参考 B88 汎関数)。B88 の重要な点は、半経験的パラメータを用いていくつかの原子の HF 交換エネエルギーを導入したことであった。つまり、 Becke は厳密な交換エネルギーを部分的に導入することで、DFT の精度、とりわけ解離エネルギーの見積もりを改善できることを示した。ちなみに、GGA の半経験的パラメータは、G2, G3 ベンチマークによりフィッティングされる。
Handy らは、上述の知見に基づき、自分たちでベンチマークセットを改良し、Becke が開発した最初の半経験的汎関数である B97 汎関数をもとにして GGA 汎関数を徹底的に探索した。交換相関汎関数 HCTC は、フィッティングに用いたベンチマークセットの分子系の原子数93, 120, 147, 407 に応じて、それぞれ HCTH/93, HCTH/120, HCTH/147, HCTH/407 と呼ばれる。HCTH は、15 のパラメータを含んでいる。

(注)HCTH という名前は、最初の HCTC を発表した際の論文著者の頭文字を取って付けたものである(参考文献 1)。
F. A. Hamprecht, A. J. Cohen, D. J. Tozer, and N. C. Handy

\tau-HCTH

2002 年に開発された半経験的汎関数。
他の半経験的汎関数と共通部分が多いため、Gaussian の内部で汎用されている。Gaussian ソースコードを読んでみると、BMK, M05, M05-2X, M06-HF, M06-L , M06, M06-2X, M11, M11-L の計算では、\tau-HCTH の関数が利用されており、サブルーチンの IFunc が異なっているだけである。

Gaussian での指定の仕方

“HCTC数字” と指定して使用します。HCTC93 なら”HCTC93″、HCTC147 なら”HCTC147″のように指定します。ただし、”HCTC”は、HCTC407 を意味します。

参考文献

  1. “Development and assessment of new exchange-correlation functionals”
    F. A. Hamprecht, A. J. Cohen, D. J. Tozer, and N. C. Handy, J. Chem. Phys. 1998, 109, 6264. DOI: 10.1063/1.477267
  2. New exchange-correlation density functionals: The role of the kinetic-energy density
    A. Daniel Boese and Nicholas C. Handy J. Chem. Phys. 2002, 116, 9559. DOI: 10.1063/1.1476309

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