ニコラス・C・ハンディー Nicholas C.Handy(1941 年 6 月 17 日 – 2012 年 10 月2 日) イギリス出身の理論化学者。2004 年までケンブリッジ大学教授。国際量子分子科学アカデミー (IAQMS) の会員でもあった。(トップ画像は、こちらから転載。)
経歴
イギリスのウィルトシャー(Wiltshire) の出身。ケンブリッジ大学で、学部時代は Mathematical Tripos の勉強をし、Paul Dirac や John Polkinghorne や Jeffrey Goldstone の授業も受けた。しかし、大学院からは理論化学を専攻し、1967 年に博士号を取得した(指導教官 Samuel Francis Boys)。博士論文のタイトルは、「Correlated Wave Functions and Energies of Atoms and Molecules」。その後、Handy は電子相関の研究を続けることになる。
卒業後、アメリカのジョンズホプキンズ大学 (Johns Hopkins University) の Bob Parr 教授の元で博士研究員として働き、1969 年にケンブリッジ大学に戻った。1991 年にケンブリッジ大学化学科の教授となった。
研究内容
博士課程からしばらくは電子相関の研究を行っていた。Handy の研究にとても大きな影響を与えたのは、外部の研究者との共同研究である。
1978 年、Handy はサバティカルで UC Berkeley に滞在し、Bill Miller や Fritz Schaefer の近くで研究することとなった。Handy は Miller とともに、”どのようにして分子の計算を行うか?”についてのとても影響力のある論文を出した。さらに、サバティカルの最後の 4 分の 1 で Bob Parr とともにクーロン積分についての研究を行った。
サバティカル終了後、 Handy はケンブリッジで Peter Knowles とともに CI 法のプログラムを作成した。さらに同学部の Roger Amos により CADPAC が作られた。(注:CADPAK は Cambridge Analytic Derivatives Package の略であり、 第一原理計算のソフトウェアである。Hartree–Fock 法や Møller–Plesset 法などの計算を行うことができる。)この後、Handy は Stuart Carter と共に振動回転スペクトルの計算に非常に精力的に取り組んだ。
1980 年代後半、有用な汎関数の開発により密度汎関数法 (DFT) が次第に注目されるようになった。Pople や Beckeの仕事に影響され、Handy も DFT 分野の研究を始めた。Handy が初めて DFT に関する論文を出したのは、1992 年である。そして、その後は DFT の分野でも多大な貢献をし、汎関数の開発(CAMB3LYP, HCTH, OPTX)など他多くの仕事を発表した(詳細は関連リンク参照)。
1969 年から 2002 年までの間に約 400 報の論文を発表した。引用回数は25,000回以上、H-index は 82。
関連する記事
- HCTH
- mPW1PW91
- PBE0 混成汎関数
- ドナルド・トゥルーラーDonald G. Truhlar
- アクセル・ベッケ Axel D. Becke
- ジョン・パデュー John Perdew
- ロバート・パール Robert G. Parr
- ヤング・ウェイタオ Yang Weitao
参考文献
- “Does Density Functional Theory Contribute to the Understanding of Excited States of Unsaturated Organic Compounds?” D. J. Tozer, R. D. Amos, N. C. Handy, B. O. Roos and L. Serrano-Andres. Molec. Phys. 1999, 97, 859. DOI: 10.1080/00268979909482888
- T. Yanai, D. Tew, and N. Handy, “A new hybrid exchange-correlation al using the Coulomb-attenuating method (CAM-B3LYP),” Chem. Phys. Lett., 393 (2004) 51-57. DOI: 10.1016/j.cplett.2004.06.011
- 分かりやすい解説
- Molecular Physics の Handy 記念号の紹介記事
- “Development and assessment of new exchange-correlation als”
F. A. Hamprecht, A. J. Cohen, D. J. Tozer, and N. C. Handy, J. Chem. Phys. 1998, 109, 6264. DOI: 10.1063/1.477267 - New exchange-correlation density als: The role of the kinetic-energy density
A. Daniel Boese and Nicholas C. Handy J. Chem. Phys. 2002, 116, 9559. DOI: 10.1063/1.1476309