現在発売中の「化学 2017 年 3 月号」(化学同人)にて「量子コンピュータと量子アルゴリズムー超高速量子アルゴリズムの開発」という特集が組まれており、非常に面白かったため、紹介したいと思います。
量子コンピューターとは?
量子コンピューターを知らないという人には、以下の動画を見ることをオススメします。
一般の人にもわかるように非常にわかりやすく解説してあります。
これまでのコンピューターでは、0 と 1 のどちらの状態しか取れないビットを情報の最小単位としていましたが、これに対して、量子コンピューターはより多くの状態を取ることのできる量子ビットというものを用いることにより、超並列計算を可能としています。量子コンピューターにも得手不得手はあるようですが、様々な問題を高速に処理できる可能性を秘めています。スーパーコンピュータが数千年かかって解く問題を数秒で解き終えることができるとも言われています。
計算化学とのつながりは?
2005 年にハーバード大学の Aspuru-Guzik らによって、変分原理によって Schrödinger 方程式の数値的最適解を得る全配置間相互作用 (Full-CI) 法を量子化学コンピューター上で行うアルゴリズムが発表されています(参考文献 1)。
これまでの量子化学計算では、Schrödinger 方程式を厳密に解くことは現実的に不可能であったため、近似的に解く方法が多数開発されてきました。しかし、量子コンピューターを使ってSchrödinger 方程式より早くより厳密に解くことができるようになれば、計算化学の正確性・研究速度が大幅に上昇するのではないかと期待できます。
量子コンピューター上での Full-CI 計算方法など詳しいことは、「化学 2017 年 3 月号」(化学同人)の記事を読まれることをお勧めします。
参考文献
- “Simulated Quantum Computation of Molecular Energies” Alán Aspuru-Guzik, Anthony D. Dutoi, Peter J. Love, Martin Head-Gordon, Science, 2005, 309, 1704-1707. DOI: 10.1126/science.1113479
- 量子化学を量子コンピュータで解く!電子構造を解明するための超高速量子アルゴリズムを開発