revM06-L の論文が PNAS に掲載されましたので、簡単に紹介したいと思います。
ちなみに、ミネソタ汎関数の開発者である Donald G. Truhlar も著者に入っていますが、彼は全米科学アカデミーのメンバーです。今回の論文では、タイトルの下に
Contributed by Donald G. Truhlar, June 29, 2017 (sent for review…
と書いてありあます。アカデミーメンバーには投稿枠が設けられており、自分で査読者を選び、その査読コメントを付して PNAS に自分の論文を寄稿することができます。。。
また、Communicated by… と書いてある場合は、アカデミーメンバーの知り合いや自身の研究室出身者などの論文を上記のプロセスで投稿した場合が多いです。
若干ズルい感じがしますよね。。。
“Revised M06-L al for improved accuracy on chemical reaction barrier heights, noncovalent interactions, and solid-state physics”
Ying Wanga, Xinsheng Jina, Haoyu S. Yub, Donald G. Truhlarb, and Xiao Hea, PNAS, 2017, early edition.
概要
Minnesota 汎関数の一つである M06-L の開発時に使用されていたよりも大きなデータベース(Minnesota Database 2015A)に対して最適化された revM06-L が発表されました。最適化に際しては、グリッドサイズとSCF 計算の反復回数の増加に関する項を削除したため、パラメータ数が 34 から 31 に減少しました。 422 の化合物に対しての revM06-L の平均絶対誤差(MUE)は 3.07 kcal/molであり、M06-L での 3.57kcal/mol から改善されています。活性化エネルギーデータベース(BH76)では、revM06-L の MUE は 1.98 kcal/mol であり、M06-L に対して 2 倍以上改善されています。 その他のデータベースに対しても revM06-L は、最適な結果を与えました。非共有相互作用データベース(NC51)では MUE は、わずか 0.36 kcal/mol、solid-state lattice constant database(LC17)では、MUE は M06-L の半分でした。
revM06-L はより滑らかなポテンシャル曲面を与え、パラメータの設定に際して使用されていない 8 つの多様なテストセットのうち 7 つについて M06-L よりも正確な結果を与えました。revM06-L 機能性は、化学および物性物理学における幅広い用途に適していると結論付けられます。
内容
今回の revM06-L では、いくつかの大きな積分項が取り除かれました。なぜならば、より細かいグリッド・サイズとより多くの SCF 計算が必要とされてしまうからです。そこで、Minnesota Database 2015A を用いて最適化を行ったところ、revM06-L のパラメータの数は M06-L の34 個に対して、31 個にまで減少しました。その結果、revM06-L は希ガス二量体のポテンシャルエネルギーをより滑らかに表現することができました。
筆者らは、revM06-L は化学や物性物理学において汎用性があると結論付けています。
記事中に間違い等ある場合は、コメント欄、twitter またはメールにてお知らせいただけると幸いです。
参考文献
米国科学アカデミー紀要(PNAS)における投稿種別と被引用数の関係(文献紹介)
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