中国の Exascale スーパーコンピューターの開発_Top500 News No.20_

新華通信社 (Xinhua News Agency) は、中国が Shuguang (曙光) とも呼ばれる Dawning Information Industry によって開発されている Exascale スーパーコンピュータのプロトタイプを発表したと報じました。

TOP500 の NEWS 欄には、毎週スーパーコンピューターに関する最新情報が報告されています。残念ながら、日本のメディアではほとんど報道されません。
当ウェブサイトでは、それらのニュースを定期的に日本語で紹介していきます。

今回紹介する記事は、
China Reveals Third Exascale Prototype
October 22, 2018

概要

新華通信社の報道によると、Shuguang は上海と深圳の国立スーパーコンピューターンセンターで稼動する予定とされています。これは、昨年から発表されている中国の Exascale スーパーコンピューターの中で、3 つ目のプロトタイプです。最初の 2 つのプロトタイプは今夏に発表されました。

これらのうちの最初のものは、天津の国立スーパーコンピューティングセンターで発表された、天河 3 exascale スーパーコンピュータのプロトタイプです。これは Phytium の Xiaomi プラットフォームに基づいた Arm ベースのスーパーコンピュータであると推定されています。 2 つ目のプロトタイプは、済南の国立スーパーコンピューティングセンターに設置される予定の Sunway exascale system のプロトタイプです。 Sunway マシンは、93 pflops の神威太湖之光にも使用されているShenWei プロセッサーの次バージョンをベースにすると予想されています。しかし、2 つのプロトタイプのプロセッサの詳細は完全には明らかにされていません。

今週発表された 3 つ目のプロトタイプについても同じことが言えますが、最終的な Shuguang Exascale マシンは中国国内で生産される x86 プロセッサに依存することが予想されます。そして中国のチップメーカー Hygon が Zen サーバーの CPU ライセンスを持っていることから、x86 ベースの Exascale マシンへの最も可能性の高い道は、AMD の技術を使用することのように見えます。 Hygon は既に現地で作った Zen チップを “Dhyana” という名前で国内市場に出荷していますが、これらは Shuguang プロトタイプの基礎となると考えられます。

参考AMD の Zen マイクロアーキテクチャをベースに中国メーカーが「Dhyana」プロセッサの生産を開始

Hygon の EPYC ライセンスは、AMD の第 1 世代の Zen アーキテクチャに限定されています。これは、超高性能スーパーコンピュータの基礎となるほど強力ではありません。しかし、これは中国人がすでに x86 のニーズを満たすために将来の Zen の設計を先取りしていることを示唆しています。コードネーム:ローマの AMD の Zen 2 EPYC チップはすでにパイプラインに入っており、来年には生産に入る予定です。しかし、Exascale システムの場合、Zen 3 EPYC プラットフォームが最も論理的な選択肢になります。このチップは 2020 年のリリース予定で、これは中国初の超大型スーパーコンピュータの生産に間に合うと思われます。

もちろん、インテルは x86 技術の中国ライセンスを提供し、米中貿易戦争の激化を考慮して、今後の報復料金の被害を回避するために、すべてのチップメーカが現地のライセンス契約を締結する可能性があります。他方、米国政府は、国家安全保障上の懸念に基づいて、先進的な米国技術の中国へのライセンス供与を断つことを決定できます。これは、主流のサーバーはもちろんのこと、中国国内の x86 ベースのスーパーコンピュータを生産するという中国の計画を効果的に阻止できるであろうと考えられています。

現在までの結論としては、中国は 3 つの exascale スーパーコンピューターのプロトタイプをすべて投入することができ、最終的なシステムの導入の少なくとも 2 年前に実施することができました。中国が 2020 年の目標を達成できるかどうかはまだ分かりませんが、3 つの選択肢があれば可能性は大きいと思われます。

雑感

2015 年にアメリカが中国への Intel の Xeon プロセッサの輸出を禁止しました。前回の Top500 では、久々にアメリカが 1 位の座を奪い返しました。しかし、AMD の zen プロセッサが中国で製造されているということから、米国の先端技術が中国に流出し、また中国のスーパーコンピューターが首位を奪取しそうな感じです。

アメリカと中国が事実上のツートップである現在、完全に日本は蚊帳の外の感じがしています。

2018 年 11 月の Top500 の発表が近づいてきましたが、果たして大きな順位変動はあるのでしょうか?

記事中に間違い等ある場合は、コメント欄、twitter またはメールにてお知らせいただけると幸いです。

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