【TOP500】スパコンランキングの見方!【Graph500_Green500】

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現代のあらゆる研究分野において必要不可欠なスーパーコンピューター。その研究開発を巡って各国の熾烈な競争が繰り広げられています。その一つの指標となるのが毎年6月と11月に発表されるスパコンランキングです。有名なものとしては TOP500Graph500Green500 の 3つのランキングがあります。

昨年のメディアの報道を要約すると

”TOP500 で京が7位!1位は中国”   とか

”Graph500 で京が1位!”   とか

“NVIDIA が Green500 で1位!日本は3位に後退”

などの見出しがありました。日本のスパコンは1位なのかどうか、凄いのか凄くないのか、それぞれのランキングの違い、などよくわかりませんでした。連日の報道で、”あれ、この前は7位って言っていたのに、もう1位になったの?”なんて思う方もいたかもしれません。

2017 年のランキングスパコンランキング発表!日本はGREEN500上位独占!【2017年6月】

来月には、新しいランキングが発表されます。そこで、今回の記事では3つのランキングの違いについて少しだけ紹介してみたいと思います。

それぞれのランキングについて

TOP500、Graph500、Green500 いずれも毎年6月と11月の年2回ランキングが発表されます。

TOP500 は、連立一次方程式の演算を行う LINPACK と呼ばれるベンチマークに基づいて、世界でもっとも高速なコンピューターの上位 500 位をランキングしたものです。順位は、演算性能(TFlops)に基づいて決められています。1993 年からスタートしました。

Graph500 は、グラフ(ネットワーク構造)探査性能ベースのベンチマークに基づく界でもっとも高速なコンピューターの上位 500 位をランキングしたものです。TOP500 で扱われない大規模データ処理の処理速度の計測を競うものであると言われています。TEPS(Traversed Edges Per Second 1秒間にたどるグラフのエッジ数)と言われるものを基に順位付けがされています。TOP500 が速いからといって Graph500 が速いとは限りません

Green500 は、エネルギー消費効率の良いスーパーコンピューターのランキングである。TOP500 の結果を基にして、MFlops/W を指標として順位付けがされています。

省電力性はなぜ必要?

処理速度を競うTOP500 や Graph500 などに意味があることはわかりますが、なぜ Green500 などでエネルギー消費効率をランキングしているのでしょうか?

例えば、理研のスーパーコンピューター “京” の処理速度は 10 TFlops (1 京 Flops) ですが、現在世界中の研究者はエクサスケール (EFlops) の性能のスーパーコンピューター開発を行っています。つまり “京” の約 100 倍の性能です。単純に現在あるスパコンを 100 倍すると消費電力も 100 倍となると考えることができます。

“京” の現在の消費電力は約 3万世帯分と言われています。これを 100 倍した 300 万世帯分の消費電力はおよそ原発1基分に相当すると言われています(関連リンク 4)。このような大規模な電力消費を可能にするのは難しいため、エクサスケールの達成は省電力性も重視しないと現実的には困難ということになりました。

そこで注目されているのがエネルギー消費効率を競う Green500 です。2015 年 6 月には日本のスーパーコンピューター菖蒲青睡蓮睡蓮が上位3位を独占し話題になりました。空冷をやめ液浸冷却にしたことが電力消費を抑えた大きな要因として語られています。その後、菖蒲は 3 連覇を成し遂げましたが、2016 年 11 月の最新のランキングでは NVIDIA が 1 位になりました!

NVIDIA といえば、ゲーマーにも馴染みの深い GPU メーカーです。Pascal 世代から格段に性能がよくなったことからも、この結果は納得できます。自動運転にも今後 NVIDIA の技術は使われるようですし、最近のNVIDIA の勢いはすごいですね!

そもそもランキングに載っていないスパコンもある

TOP500 や Graph500 は自動的に掲載されるものではなく、ランキングに載るためには応募しなくてはいけません。

ランキング用のベンチマークの実行には通常1日以上かかります。できるだけランキング順位を上げるためには良い結果を出すための試行錯誤も含めて数週間の期間が必要だそうです。長期間スパコンの一般利用を停止してベンチマークの測定に使用するのは無駄だと考える研究機関の場合、最初からランキングに参加しないというケースもあるそうです(参考文献 5)。

また、最初にランキングに載った後、次の回から数値の更新がされていないスパコンもあります。

実際の性能を反映していない?

全てのランキングはベンチマークに基づいて順位されているので、実際のソフトウェアの実効速度では順位が入れ替わります。ベンチマークでの演算で行う処理と実際のソフトウェアで行う処理は別物です。(しかし、ランキング上位のスーパーコンピューターはそれ専用のアプリケーション開発に用いられている場合もあるため、市販のソフトウェアが遅くてもあまり気にする必要はないのかなという気もしてしまいます。参考:ゴードン・ベル賞)

実際、TOP500 では 100 位程度だったスパコンが Graph500 ではトップ 10 に入ってきたこともあります。スパコン開発時には、どのような用途に特化させるか選択しなければならないため、各々のスパコンに得手不得手があります。そのため、TOP500 で1位をとったからといって、全ての処理が高速かと言えば、そんなことはないのです。

例えば、TOP500 で1位の神威・太湖之光は 1 ノードあたり cpu 260 core, memory 32 GB です。このメモリ容量では、テラバイト TB 単位のメモリを要求してくる De novo ゲノムアセンブリなどの用途には向いていないと思います。しかし一方で、 LINPACK などの演算には向いている、と言った具合です。

また、消費電力に関しても実際に一般ユーザー向けに運用しているスーパーコンピューターの場合メモリや HDD や SSD などの記憶媒体なども大量につながなくてはならないため、Green500 に特化した超省電力仕様にはなっていない場合もあります。

TOP500 で 1 位をとることには、国力を示したり、”スーパーコンピューターの研究” という面では価値がありますが、実用性には直結していない面もあります(全ての場合がこれに当てはまるわけではありません)。

まとめ

来月くらいには TOP500 が発表され、マスメディアは京の順位や中国のスパコンの順位について騒ぎ立てると思います。しかし、Graph500 や Green500 の結果も見て総合的に判断するべきかもしれません。

本サイトでは化学・生物関係の計算しか紹介しませんが、スパコンの研究・開発はむしろその他の分野の方において重要な気がしています。

管理人は、コンピューターに関しては素人です。本記事は管理人が最近いろいろと調べた内容に基づいて作成していますので、管理人の知らないこともまだまだたくさんあると思います。もし記事中に間違い等があればコメントまたはメールにてご指摘いただければ幸いです。

関連リンク・参考文献

  1. TOP500(Official Page)
  2. Graph500(Official Page)
  3. Green500(Official Page)
  4. 『世界1〜3位独占!次世代スパコンから見る経済』三橋貴明×齊藤元章(株式会社EXASCALER、株式会社PEZY COMPUTING代表)(Youtube)
  5. スパコン最大の学会「SC13」に見る先端技術 10 Top500にみるスパコンの方向性(後編)

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