スーパーコンピューターの計算速度の世界ランキング「TOP500」が発表されました。一位は、中国の神威太湖之光。日本は 6 位に「オークフォレスト・パックス」、7 位に「京」が入りました。
引用元
(トップ画像は、https://www.top500.org/news/china-tops-supercomputer-rankings-with-new-93-petaflop-machine/ より転載)
スーパーコンピューターの性能向上は科学の発展に直結します。量子化学計算や惑星の軌道計算、生物分野でのゲノム配列、トランスクリプトーム解析、MD シミュレーションなどなど、現在の科学はスーパーコンピューターに大きく依存しています。
Top500とは?
Top500とは、世界で最も高速なコンピューターシステムの上位500位までを定期的にランク付けし、評価するプロジェクトです。年 2 回行われていおり、毎年 6 月と 11 月に発表されています。1993 年から開始された TOP500、初期の頃は日本とアメリカが 1 位を争っていましたが、最近では中国が 8 連覇しています!
評価方法としては LINPACK ベンチマークが使われています。浮動小数点演算性能を評価するものであり、線形方程式系を解く速さを競います。
オークフォレスト・パックスとは?
オークフォレスト・パックス(Oakforest-PACS)は東京大学情報基盤センター(センター長:中村宏)と筑波大学計算科学研究センター(センター長:梅村雅之)が共同で開発したスーパーコンピューターです。富士通が製造し、最新の演算装置約8200台をつないだものであり、東京大学柏キャンパス(千葉県柏市)に設置されています(富士通の関連記事)。
第一世代のスパコンは、柏という地名にちなみ Oakleaf (柏の葉)という名前が付けられた。第二世代にあたる今回は、筑波大学がこれまで開発してきた PACS スパコンを組み合わせて、オークフォレスト・パックス(Oakforest-PACS)という名前となった。
理化学研究所のスーパーコンピューター「京(けい)」(神戸市)の約 11 PFLOPSに比べ、約3分の1の消費電力で2倍以上の計算速度を持つとされています(ピーク時で 25 PFLOPS)。製造コストも京よりも大幅に少ないです。主に、宇宙物理学や大気、海洋、地震などの地球物理学、飛行機の強度解析などの研究に活用されているようです。
最近のスーパーコンピュータでは、GPU を使うものが増えてきているが、オークフォレスト・パックス(Oakforest-PACS) は広範なユーザーに使ってもらうことを目的として、GPU を搭載していない。そのため、CPU+GPU の煩雑なプログラミングが不要となっている。
FLOPS とは?
FLOPS とは、コンピュータの処理能力の単位で、1秒間に浮動小数点演算を何回できるかという能力を表しています。1 P(1 ペタ)は 10 の 15 乗なので、1秒間に 1,000,000,000,000,000回 の浮動小数点演算ができることを意味します。京は 1 の 16 乗なので、1秒間に 10,000,000,000,000,000回 の浮動小数点演算ができます。
例えば、人間が電卓で 1 秒間に 1 回浮動小数点演算をしたとしたら、1 FLOPS です。スパコンの処理能力を表すときによく「世界中の人たちが電卓を使って24時間休まず続けて17日間かかる計算をスパコンは 1 日で終わらせてしまう」などと表現されます。
世界中の人口を 70 億人とすると全人類の計算速度は FLOPS です。
1 日は、60 秒 60 分 24 時間 = 86400 秒です。
FLOPS 秒 17 (日) =1.03 FLOPS となります。
2016 年 11 月の結果
今回の top500 の 10 位以内の結果は以下のようになっています。
計算化学との関係は?
Top500 のスーパーコンピューターは Top500 用のベンチマーク計算に特化しています。そのため、得意な演算の種類というものがあります。ですので、ベンチマークの種類を変えるとスパコンのランキングは変わります。また日本は省エネに重きを置いた開発を行っているようです。
使用する計算手法により要求されるコンピューターのスペックは異なるため、TOP500 上位のコンピューターだからといって、量子化学計算が速いわけではありません。例えば、DFT 計算では CPU の性能が求められるのに対し、MP2 などでは HD の容量が求められる、といったようにコンピューターにより向き不向きがあります。
TOP500 上位 10 位のスーパーコンピューターを比較すると使用されている CPU の性能やコア数が大きく異なります。すなわち、一つ一つの CPU の性能がそれほど高くなくても大量の CPU を使用することにより計算速度を上げているものも少なくありません(今回使用された CPU の性能については関連リンク先に書いてあります)。
TOP500 のスーパーコンピューターで Gaussian などのソフトウェアをそのまま利用できるわけではありませんが、仮に神威太湖之光で Gaussian の DFT 計算をしてもあまり計算速度は早くないと思います(ノード数に比例した計算速度の増加にも限界があります)。
ソフトウェアにより要求されるスペックも変わってくると思うので、全分野に対応した実用的なスーパーコンピューターを作ることは難しいと思います。しかし、CPU の処理能力が頭打ちになりつつある現在、このような並列計算機の研究は、将来的に非常に重要です。
(注)
管理人はコンピューターの専門家ではありませんので、間違いなどがありましたら、コメントまたはメール等でご指摘いただければ幸いです。
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