先月、Gaussian 16 の Revision B.01 がリリースされました。
Gaussian 本社ウェブサイトの Release Note を見ると、Revision B で追加された機能のところに [REV B] と記載してあります。
GPU は Pascal 世代対応に
Rev. A.03 では、Kepler 世代の K40, K80 にしか対応していませんでしたが、Rev. B.01 からは Pascal 世代の P100 にも対応したようです。PGI でコンパイルして、なんとか GTX 10 シリーズでも動くようにならないかなぁと思っています。時間があったら検討してみたいと思います。
参考:gaussian 16 は pascal 世代の GPU に未対応?
ちなみに、上記以前の GPU はメモリサイズが小さすぎて Gaussian の計算には対応していないようです。ちなみに、P100 には HBM2 が 16 GB、K40 には GDDR5 が 12 GB 搭載されています。公式ページでは、gaussian の job で 8-9 GB のメモリを割り振るときは GPU 上に 12 GB のメモリが、11-12 GB のメモリを割り振るときは 16 GB のメモリがあると計算効率が良いそうです。
管理人は、Gaussian 16 から追加された GPU の機能についてまだ使用していません。TensorFlow などで GPU を使うと、行列計算部分が体感で 10〜50 倍くらい早くなっている感じがしています。Gaussian でどれくらい計算が加速されるのか興味があります。
新しく追加された機能
- CIS および TD を用いた励起状態での Static Raman Intensity を計算することが可能になりました。 TD Freq = Raman は電場に対する数値微分によって分極率を計算するので、これらの方法の Freq = Raman の計算コストは Freq = noraman 場合の 7 倍です。
- Linda worker 間のタスクの動的割り当てがデフォルトになり、並列効率が向上しました。
- ChkChk ユーティリティはジョブステータス(ジョブが正常に完了したか、失敗したか、進行中かなど)を報告するようになりました。
- 原子の入力行のオプションのパラメータで、有限(非点)の核が使用されているときに使用する半径を指定できるようになりました。 半径は、RadNuclear = val 項目を使用して原子単位で浮動小数点で指定できます。 例えば、C(RadNucl = 0.001)0.0 0.0 3.0 のように。
- [REV B]では、チェックポイントまたは matrix element ファイル(Link 0 コマンドに相当する %OldChk または %OldMatrix)を使用して、入力および/またはデータを指定するコマンドラインオプションが導入されました。
- 基底関数が構築される前に DFTB パラメータが Link 301 で読み取られ、要素の d 関数の有無がパラメータファイルから取得されようになりました。
- チェックポイントまたは行列要素ファイルへの入力および/またはデータを指定するためのコマンドラインオプションが追加されました。
コマンドラインが充実?
g16 Command Line Options にコマンドラインの一覧が追加されています。
しかし、gaussian でコマンドラインって需要あるのか。。。
修正されたバグ
- SCF = QC を使用しているときにジョブステップの途中で(RWFから)再開する際の問題が修正されました。
- SCF = XQC または SCF = YQC の通常のSCF部分を実行する場合、新しい最低エネルギー波動関数が見つかった場合にのみ、軌道と密度が保存されます。 L502が収束しなくなり、計算がL508(QCまたは最急降下SCF)に移行すると、通常のSCF反復からの最良の波動関数が使用されます。
- EOM-CC計算の途中で RWF からの再起動に関する問題が修正されました。
- 空のベータスピンスペースまたは完全なアルファスピンスペースがあったときのROMP4およびEOM-CCの問題は修正されました。
- G4およびG4MP2ジョブのサマリー表の誤ったラベルが修正されました。
- RWF が物理ファイルに分割されたときの NBO のスクラッチファイルの命名に関する問題は修正されました。
- 非常に少量のメモリを使用して大規模分子の CIS および TD 周波数ジョブを失敗させる割り当て問題が修正されました。 これらのジョブは完了しましたが、より多くのメモリ(つまり、%Mem の値が大きい)が与えられれば、より効率的に実行されます。
- FormCheck キーワードを使用したジョブが失敗するバグが修正されました。このキーワードは推奨されておらず、より柔軟な-fchkコマンドラインオプションが優先されます。
- PCM 溶媒和を含む計算からチェックポイントファイル上で操作するとき formchkによって発せられた不要な警告は削除されました。
- Opt =(TS、ReCalcFC = N)の経路が修正されました。
- 分子力学パラメータは、フォーマットされたチェックポイントファイルに正しく格納されるようになりました。
- NBO6(Pop = NBO6Del)を使用して相互作用の削除を行うルートが修正されました。
- 複合ジョブの後のステップで GPU が有効にならなかったバグが修正されました。
- atomic property lists の不要なキーワード QMom と Magneton を解析する際の問題が修正されました。
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