青森の六ヶ所核融合研究所が、核融合研究分野では世界でもっとも強力なスーパーコンピューター Cray XC50 を配備するそうです。
核融合は、もし実現すれば世界のエネルギー需要を 1000 年以上 –もし海洋性リチウムが確保されていれば何百万年もの間– 供給することができ、化石燃料による地球温暖化の危険や核分裂に伴う放射能の危険性もないと考えられています。
TOP500 の NEWS 欄には、毎週スーパーコンピューターに関する最新情報が報告されています。残念ながら、日本のメディアではほとんど報道されません。
本ウェブサイトでは、それらのニュースを定期的に日本語で紹介していきます。
今回紹介する記事は、
“Japan Will Deploy the World’s Most Powerful Supercomputer Dedicated to Fusion Science”
March 16, 2018
概要
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 (QST) は、核融合研究開発のために Cray XC50 スーパーコンピューターを配備することを決定しました。
現在のところ、このシステムにはまだ名前がつけられていませんが、4 PFLOPS 以上のピーク性能と、これまで配備されていたスーパーコンピューターの 2 倍以上の容量を持っています。これまでのシステムは、Helios と呼ばれる 1.5 PFLOPS のBullx クラスターでした。2012 年には、世界で 12 番目に強力なスーパーコンピューターだったそうです。
新しい XC50 システムはそのようなランキング上位ではありませんが、今年後半に導入されると、融合エネルギー研究に使用される世界で最速のスーパーコンピュータになるでしょう。Crayは、ハードウェアの詳細についてはほとんど明らかにしていませんが、Skylake Xeon CPU を搭載しているようです(また、XC50 には NVIDIA Tesla GPU をサポートするオプションがあります)。4 PFLOPS 以上のピーク性能であることを考えると、新しいシステムには、1000 を超えるデュアルソケットノードが搭載されると推測されます。現在、世界で最もパワフルな XC50 スーパーコンピュータはスイスの 25 ペタフロップの Piz Daint ですが、そのシステムでは NVIDIA Tesla P100 でほとんどの FLOPS 数を稼いでいます。
この新しいシステムは、原子力産業と研究の中心地である青森県の QST の六ヶ所核融合研究所に設置される予定です。 スーパーコンピュータの主な任務は、研究所の核融合科学を推進するために使用される QST のプラズマ物理コードを実行することです。 また、核融合エネルギーの可能性を実現するための多国籍研究開発プロジェクトである ITER
プロジェクトを支援するためにも使用される予定です。この取り決めの一環として、日本とヨーロッパの数千もの研究者が新しいシステムにアクセスする予定です。
クレイ・ジャパン社長の中野守氏は、「うちらは、信頼できるエネルギー源として核融合エネルギーを研究する QST にスーパーコンピュータを提供することを楽しみにしていまんねんわ」と述べました。続けて「Cray XC50 のスピードと統合ソフトウェア環境は、QST のインフラストラクチャを強化し、研究者が発見までの時間を短縮することを可能にしまんねん」とも述べました。
核融合エネルギーはまだまだ長い道のりです。 ITER の最初のプラズマリアクタは 2035 年に稼働予定であり、数十億ドルの費用がかかると予想されています。 しかし、投資家はそれ以上の価値があると考えています。 潜在的に核融合は、世界のエネルギー需要を 1000 年以上 –もし海洋性リチウムが確保されていれば何百万年もの間– 供給することができ、化石燃料による地球温暖化の危険や核分裂に伴う放射能の危険性もありません。
融合エネルギーが実現する頃には、新しい QST マシンは使われなくなってしまうでしょう。おそらく、最初の生産用原子炉は、核融合炉の全プラズマ内容をシミュレートすることができるエクサスケールスーパーコンピュータの助けを借りて設計されるでしょう。
感想
4 PFLOPS というと TOP500 では 27 位相当です。
核融合には期待しているので、もっと研究が進むことを期待しています。
今回の記事で初めて知ったのですが、青森県には六ヶ所核融合研究所以外にも量子科学センターなど原子力関連施設がたくさんあるんですね。
記事中に間違い等ある場合は、コメント欄、twitter またはメールにてお知らせいただけると幸いです。
参考文献
ITER—the energy of the future (YouTube)
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