過酸化水素の O–O 結合のホモリシスの計算!

Share This:

過酸化水素の O–O 結合のホモリティックな開裂についての論文が出ましたので、簡単に紹介したいと思います。

“O–O Bond Homolysis in Hydrogen Peroxide”
Lakshmanan Sandhiya and Hendrik Zipse, J. Comput. Chem. in press. DOI: 10.1002/jcc.24870

概要

本論文では、ハイブリッド汎関数(B3LYPM06-2X)、ダブルハイブリッド汎関数(B2-PLYP)、カップルドクラスター CCSD(T) 、多参照摂動 CASPT2 法の4つの概念的に異なるタイプの計算方法を用いて、過酸化水素(H_2O_2)中の O—O 結合のホモリシスの研究が行われています。さらに、基底関数のサイズが結果に与える影響についても考慮されています。 今回検討したすべての計算手法において、過酸化水素中の O—O 結合ホモリシスは、hydrogen bonded radical pair complex を通って進行することが見出されました。 この radical pair が過酸化水素へと崩壊する際の反応障壁は非常に小さく、全体的に非常に平坦なポテンシャルエネルギー曲面であることがわかりました。 しかしながら、この radical pair 間の水素結合エネルギーは非常に大きく、今回の研究で用いられたすべての計算方法において、10 kJ/mol 以上でした。

内容

計算手法

まずは、(U)B3LYP/cc-pVxZ (x 5 D, T, Q, and 5) を用いて構造最適化が行われました。
基底関数系の影響を調べるために、よく使われる Pople 系基底関数 である 6-31G(d) や 6-311+G(2df,2p) も用いて計算が行われました。これまで行われきた過酸化水素の先行研究では Pople 系基底関数が用いられていました。また、最近の研究では Minnesota 汎関数も用いられているため、(U)M06-2X と前述の基底関数との組み合わせについても精査されました。
mixed GGA/perturbation theory approach で計算された相関エネルギーが、開裂反応にどのように影響を与えるのかについては、(U)B2-PLYP/cc-pVTZ で計算したあたいとの比較により、調べられました。

これらの計算結果は、”gold standard” として用いられている (U)CCSD(T)/cc-pVTZ と比較により評価されました。

後半部分の エネルギーの取り扱いが適切かどうか調べるために、O-O 結合の開裂により生じる ビラジカル中間体については CASPT2、cc-pVTZ 基底関数の組み合わせで  (2,2) と (6,4) の active spaces での構造最適化も検討されました。

DFT 計算は Gaussian 09 で、CASPT2 計算は MOLPRO を用いて行われたようです。

内容

今回の論文では、ラジカル中間体がダイマー構造を取る方が約 3-4 kcal/mol 安定だと述べられています。このような complex の計算を行う際には、それぞれのモノマーを一点計算した値と complex の状態のエネルギーを比較することにより、大まかに相互作用を見積もることができます。

ヒドロキシラジカルと水のそれぞれの 2 量体構造での水素結合の強さは、近いようです。

また、相互作用を更に詳細に考慮する際には、論文中でも述べられているように、BSSE (基底関数重なり誤差)を考慮しなくてはいけません。gaussian では、Counterpoise というキーワードを指定すると、簡単に計算することができます。Counterpoise 法の input の書き方、log ファイルの読み方については、後々紹介していきたいと思います。

はー、最近忙しい。ゆっくりプログラミングしたり、論文読んだりする時間が取れない。

管理人は、計算化学・有機化学の素人ですので、もし記事中に間違いなどがありましたら、コメント欄、メールまたは twitter などで教えていただければ幸いです。

関連する記事

2 comments

    1. ご指摘ありがとうございます。
      編集画面では Latex で入力しているため、パッと見で間違いに気づきませんでした。
      今後とも間違い等発見しましたら、気軽にご指摘ください。

コメントを残す(投稿者名のみ必須)